お客様のDX課題の解決に取り組み、 ともに成長し地域貢献できる企業へ
DX事例
DXに取り組む企業に対し、国はDX認定制度を設けています。これは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度。認定された企業には、DX認定制度ロゴマークの使用、中小企業を対象とした金融支援措置、人材育成のための訓練に対する支援措置、DX銘柄およびDXセレクションへの応募が可能といったメリットがあります。
高知市にある株式会社山元(やまげん)も、2024年12月にDX認定を取得しました。山元は、1954年にB to Bの文房具商として創業。平成を迎えるころからはIT機器のディーラーも兼ねています。そうした中で、取引のあったキヤノンマーケティングジャパンの勧めでDX認定に取り組みました。みずから準備にも参画した山元俊博社長をはじめ、認定申請を担当した高橋孝俊氏、有光亮氏に話をうかがいました。
デジタル化の波を受けてDXへの取り組みを開始
──DXへの取り組みに至った経緯をお聞かせください。
代表取締役社長 山元俊博氏(以下:山元):当社の前身は1954年に創立した文房具商です。平成を迎えるころからインターネットが一般開放され、通信販売も普及。産官学のあらゆる組織でIT化が急速に進んだことから、当社は基幹事業をIT機器の販売に切り替え、文房具販売と2本柱のディーラーへ自己改革したのです。
令和に入ると、DXがビジネスのキーワードとして浸透し、ハードウェアを販売するだけでは顧客満足を得られなくなることが予見されるようになりました。モノを売るだけではダメで、コトを提供しなければならない。生き残るには、機器の運用までカバーしなければならない、つまり顧客が進めるDXを当社がサポートできることが必要と考えたわけです。ただし、それには自分たちがDXに精通していなければなりません。そこで、まずは自社のDXに取り組み始めたのです。株式会社山元 代表取締役社長 山元俊博氏
──具体的には、どんなことから始めましたか。
営業部部長 高橋孝俊氏(以下:高橋):グループウェアを用いてリアルタイムで商談データを共有し、お客様対応業務のスピードアップを図りました。同時に社員同士のコミュニケーションを活性化することで業務の効率化を図りました。またCRMに蓄積されたお客様の課題やIT導入状況などのデータを分析・活用し、ニーズや状況に合わせたITソリューションの提案を行いました。つまり当社は「自社のDX推進」と「お客様のDX支援」の両輪でDXに取り組んできたわけです。
――DXは挑戦であり失敗もつきもの。それを許容する企業風土があったのですね。
山元:それを意識した雰囲気づくりをしています。失敗をしても何らかの前進はしているはずで、挑戦しなければ前進はゼロでしょう。一歩ずつでも前進しなければ、改革も成し得ません。まず、挑戦への初めの一歩を踏み出すことが大事だと思います。
──高知のDXマーケットの状況はいかがでしょうか。
山元:高知県は少子高齢化や都市部への流出によって人口減少に歯止めがかからないのが実情です。地元の労働人口減少に伴う人手不足、従業員の高齢化に加え、不安定な世界情勢による原材料価格の高騰など、企業の存続を左右する喫緊の課題が山積しています。そのため多くの県内企業が、DXを通じた効率アップを中心に、業務改善と生産性の向上によって諸課題を解決し、さらなる発展を目指しています。
伴走支援を得て約6カ月でDX認定を取得
――2024年、DX認定を取得されましたね。
営業部 有光 亮氏(以下:有光):取引のあったキヤノンマーケティングジャパンさんから勧められ、認定取得へと動き始めました。キヤノンマーケティングジャパンさんには伴走支援をお願いし、申請にあたってのアドバイスをいろいろといただきました。昨年6月に準備に着手し、12月には認定を取得することができました。
株式会社山元 営業部 有光 亮氏
──DX認定申請までのプロセスには苦戦する場面もあったのでしょうか。
高橋:一番大変だったのはDX推進指標の自己診断でした。社内の取り組みをすべて見直し、文書化したのですが、ボリュームも多く、矛盾のないように整理する作業は大変でした。私たちの目線と外部の目線は違うので、そこはキヤノンマーケティングジャパンさんにも協力を仰ぎながら、客観的なご意見をいただきました。例えば社内では共通認識であっても、第三者から見ると言葉足らずなこともありますから、さまざまな気づきを得ることができました。自己診断を行ったことは、DX認定に取り組んで良かった点の一つです。
――これから認定取得を目指す企業へのアドバイスはありますか?
有光:ゼロから準備して取得を目指すよりも、「すでに作成している事業戦略を広げるイメージ」で臨めば、認定取得のハードルが低くなるのではないでしょうか。振り返って、そんなふうに思います。
従来の事業とのシナジー効果にも期待
──DX認定を取得した後には、どんな変化がありましたか。
山元:社員たちの意識が一段と変わりましたね。ムリやムダを省くこともできるようになりました。お客様が当社に期待することも変化したと思いますし、われわれが立つステージが一段アップしたように感じています。IT機器の納入にとどまらずご相談くださる範囲がグッと広がりましたから、お客様との会話の幅も広がりました。また認定を取得してすぐに、県庁や産業振興センターからコンタクトがあり、DXの推進を後押ししてほしいといった言葉もかけてもらいました。
高橋:得意先にDX化を勧めている銀行さんとも、協働できないかという話がありました。DX認定は他社との差別化に役立つのはもちろんのこと、新たなつながりを生むツールになっていると感じています。
株式会社山元 営業部部長 高橋孝俊氏
――順調に進んでいるのですね。
山元:非常に多くの企業などに文房具を納入してきたという基盤がありますので、IT機器ディーラーへ変革した際にもスムーズだったのです。これからは文房具、IT機器、DXサポートのシナジー効果に期待しています。その実現のために何より重要なのは、信用と信頼です。これまでのお取引で培ってきたものに加えて、DX認定は信頼の証しになると考えています。県内の同業他社でDX認定を取得しているのは、現在のところ当社だけ(2025年6月現在)です。お客様が、またさらに新しいお客様を紹介してくださるケースもあります。また、当社ビジネスは高知市内を主な商圏としてきましたが、DXサポートの引き合いは県外からも来ています。
お客様の期待に応え「DXディーラー」へ
――DX実現によって、どんな役割を担いたいとイメージしていますか。
山元:経営ビジョン(DXビジョン)として、「お客様のDX課題の解決に取り組み、ともに成長し地域貢献できる企業を目指します」と掲げました。繰り返しになりますが、CRMに蓄積されたお客様の課題やIT導入状況などのデータを分析・活用し、ニーズや状況に合わせたITソリューションのご提案を行います。またグループウェアを用いてリアルタイムで商談データを共有し、お客様対応業務のスピードを向上するとともに、社員同士のコミュニケーションを活性化することで、業務の効率化を図ります。定量的な目標は、年間新規顧客構成比20%にあたる月10社の新規顧客の獲得です。
有光:CRMに蓄積されたデータを活用し、顕在的・潜在的なニーズを的確に把握して、お客様にとって最適なビジネス環境をご提案します。グループウェアを導入しリアルタイムでの情報共有を行うことに加え、スマートフォンやタブレットなどのICT端末と連携することで、お客様のご要望にいっそう迅速に対応していきます。
高橋:お客様の課題をヒアリングし、それぞれにとって最適なデジタル技術やITソリューションの導入・運用のサポートを通じて、生産性の向上・業務の効率化など課題解決を実現します。お客様の業態は、製造業、流通業、建設業、病院など多岐にわたります。それぞれに問題点が異なりますので、しっかりコミュニケーションをとり、お客様のDX推進に貢献していきます。
――DX人材の育成についてはいかがですか。
高橋:当社全体のDX・ITリテラシー向上を目指し、研修、勉強会を行います。また各社員ともITパスポートや情報セキュリティマネジメント、電子ファイリング、NIコンサルティング認定のインストラクター制度「NICI」などの資格取得にも積極的に取り組んでいきます。営業・サービス全員のITパスポート取得が目標です。さらに、DXサポートの提案力向上を目指し、社内学習会や好事例の発信を実施しています。
有光:一方、人材確保のためには社員の働きやすさ向上を目指し、オフィスのフリーアドレス方式の採用や社員へのICT端末の配備などを行い、ワークスタイルの変革を促進していきます。
山元:社員たちに自主学習の必要性が分かってもらえる社風づくりに努めていきたいと思います。また資格取得に積極的に取り組む中で、座学ばかりでなく、頻繁に現場へ出ていくことも重要だと考えています。
――社内の体制整備については、どのようなお考えでしょう?
山元:営業部にDX推進担当を組織し、経営方針に基づいて、DX戦略の策定やDXソリューションの比較・検討を行います。DX推進担当者を中心にデジタル技術やITソリューションの導入事例などを社内伝播することで社員のスキルを向上させ、お客様のDX推進に貢献します。データを正確に分析し活用するために、CRMや情報分析ツールの構築・改修などITインフラ関連に投資予算を積極的に配分していきます。そのほか、社員に支給したスマートフォンやタブレットなどICT端末をはじめ、営業支援システムを活用しながら業務の効率化や迅速な情報共有に取り組んでいきます。
──今後に向けての抱負をお聞かせください。
山元:高知県における労働人口の減少に伴う人手不足、従業員の高齢化などの問題は当社にとっても例外ではなく、ビジネス環境は目まぐるしく変化しています。南海トラフ地震も大きな課題で、産官学のあらゆる組織にとってBCPは重要なテーマです。
またIoTやクラウド、生成AIなど近年のデータ活用およびデジタル技術の発展によって、お客様を取り巻く環境やニーズはますます多様化しており、従来の商品やサービスだけではニーズを充分に満たすことが困難になっています。
このようなリスクがある状況において企業が生き残るには、まずDXによって生産性と業務効率をアップさせることが必要不可欠です。当社は、自社のDXをいっそう推進するとともに、当社の提供する商品やサービスを通じてお客様の生産性と業務効率の向上を図り、「DXディーラー」として、お客様のご期待に応える企業であり続けたいと考えています。
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