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いまさら聞けないインターネットのドメイン名とは ——計画的な利用のススメ

技術解説

WebサイトのURLや、電子メールアドレスは、企業や社員のアイデンティティのひとつです。自分たちの名前の様に使っている「ドメイン名」について、最低限のことは知っておいた方が良いでしょう。また、このドメイン名にまつわる「困ったこと」(事故・事件)も起こっています。技術的なことはさておき、どんなことが起こっていて、何が問題なのかの概要は知っておいて損は無いはずです。

皆さんインターネットを使っていますよね?

企業活動のDX(デジタル変革)といっても様々です。企業内部の業務を質的に変革する守りのDXもあれば、新たなビジネスモデルで勝負を挑む攻めのDXもあります。守りのDXでも攻めのDXでも「インターネットは一切使わない」という方や企業はないだろうと思います。会社のWebサイト(ホームページ)を持たない企業はほとんどないでしょう。電子メールアドレスを持たずに電子メールを一切使わない方も皆無でしょう。

インターネットでこんなことが起こっているのを知っていますか?

2024年の末ころ、セキュリティ系のITベンダが使用していたWebサイトのドメイン名が、アダルトサイトに変わっていたというニュースがありました。また、2025年には、かなり以前に終了したテレビアニメの公式サイトと同じドメイン名で、オンラインカジノに誘導するような内容が掲載されていたそうです。

民間の事例を最初に紹介しましたが、実は政府機関や自治体が開設していたWebサイトでも、似た事例がたくさんあります。2025年、プレミアムフライデーを推進するWebサイトだったものが全く別物になっていた例がありました。また、2026年、名古屋市がかつて関わっていたドメイン名を、まったく関係のない第三者が取得していたケースがいくつも見つかったという発表もありました。他にも全国の自治体で似た事例がいくつも見つかっています。

これらは、詐欺にあってWebサイトを乗っ取られたわけではなく、IT製品のセキュリティ脆弱性を悪用されてWebサイトを改ざんされたわけでもありません。元々そのドメイン名を使っていた組織が軽率にドメイン名を手放した結果、ルールに沿った手続きで第三者が再登録した結果です。もっとも、差し替わった後の内容は問題無いとは言えないのが困ったものです。

インターネットのドメイン名とは

インターネットの通信はIPアドレスという数字で自分のコンピュータや通信相手のサーバを特定して通信をします。ただ、このIPアドレスは、「3.166.228.119」や「2600:9000:27b6:e000:6:c67a:2000:93a1」の様な意味不明な10進数や16進数の羅列です。もしこの数字を入力しないといけないとしたら、確実に間違えるでしょう。

そこで、名前を付けて数字のアドレス(番地)と対応づけるようにしました。その名前が ドメイン名 です。

WebブラウザでインターネットのWebページを見るときに、URLというものを入力することがあります。次のURLで、ドメイン名はどこでしょう?

https://dx.ipa.go.jp/tools/dxpi
① https:  ② dx.ipa.go.jp  ③ ipa.go.jp  ④ /tools/dxpi

正解は②と③です。どちらもドメイン名です。

インターネットのドメイン名は階層構造になっています。たとえば「jp」というドメインの下に、「go.jp」というサブドメインがあり、さらにその下の「ipa.go.jp」というドメイン名を、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)という組織が利用しています。

この記事でこの後に説明するドメイン名は、主に③についての話です。ただ、ドメイン名と呼ぶのは③だけではないので最初に説明をしました。

インターネットのドメイン名は勝手に決めて使うわけにはいきません。たとえ会社名と同じスペルであっても、ドメイン名の登録機関に申請・登録をして、使いたいドメイン名の管理権限の委任をしてもらう必要があります。「管理権限の委任」と堅苦しい表現をしましたが、要はドメイン名は「買った」ものではなくて、通常はその登録料を支払うことで、一定期間の権限を得ていることになります。「借りている」と考えた方が近いでしょう。

さて、ドメイン名は階層構造だと書きました。あるドメイン名の管理権限を得たら、そこから下位の構造は、一定のルールを守れば自由に作ることができます。ですから、「ipa.go.jp」の管理権限があるIPAは、「dx.ipa.go.jp」や「case-studies.ipa.go.jp」といったサブドメインを作ってサービスを提供することができます。

「取得」したドメイン名はあなたの所有物?

使いたいドメイン名が運よくまだ誰にも使われておらず、必要な費用も支払って登録できたとしましょう。よく「ドメイン名を取得できた」と言いますが、未来永劫、そのドメイン名があなたの所有物になったわけではありません。期限を区切ってリースされている様なものだと考えるのが良いでしょう。そして、手続きをして延長し続ける限りは使い続けることができます。ただし、co.jpドメインなどで前提条件がある場合には、会社を清算した場合など条件を満たさなくなったら延長できないケースもあります。

期間が決まっていて更新するタイミングがそのうちに来ることを忘れない様にすることが、この記事で知ってほしいことの一つです。「自分の所有物になった」と思いこまない方がいいでしょう。

新サービスに新しいドメイン名を付けたいですか?

新たに会社を立ち上げたり、新規事業を始めたりするとき、いまやインターネットでの情報発信は必須でしょう。自分たちのWebサイトや電子メールアドレスにどんな名前(ドメイン名)を付けるのかは、会社名や商品名と同じくらい重要です。

既存の会社の中で新しいサービスを始める場合にも、従来の会社のイメージを払拭したいということもあるでしょう。また、単に新サービスの名前を目立たせたいと思うこともあるでしょう。

そんなとき、サービス名「◎◎◎◎」を冠した「◎◎◎◎.jp」や「◎◎◎◎.com」みたいなドメイン名が「空いてる」ことを見つけてしまったら、そちらを使いたくなる気持ちもよくわかります。

でも、新しいドメイン名が登録できたとして、あなたの新サービスはこの先長く続けることが確実なのかを、冷静に考えてみてください。これがこの記事で伝えたい2つ目です。

事業撤退またはキャンペーンが終わって不要になったドメイン名

独自のドメイン名を使って情報発信していたサービスが終了した場合、ドメイン名の登録(利用)を延長する理由もなくなります。ちゃんと認識しているかどうかに寄らず、ほったらかしておけば登録期限は切れます。そうなったドメイン名は、積極的に譲渡しなくても、誰かが新たに登録して使えるようになります。

これは、誰かを騙して強奪したり、セキュリティの脆弱性を突いて勝手にデータを書き換えたりという悪行ではありません。かつて住んでいた家に他人が住むことになる様なことでしょうか。でも、表札の名前までそのままなのを平気な方は少ないでしょう。

知らない誰かに拾われてしまったら…

自由になったドメイン名を別人が登録して再び使うことは悪いことではありません。でも、かつて誰かが使っていたドメイン名であることを承知で欲しがるのはなぜなのか、何のために使いたいのかに、少しだけ考えを巡らせてください。

もしもそのドメイン名を使って、何か悪いことを始めていたとしても、それはあなたが悪時に手を貸したことにはなりません。でも、そのドメイン名が以前のままでサービスを続けていると誤解されて被害が出たとしたら、困るのは被害にあわれた方だけではなくて、ドメイン名を手放した会社にもイメージ悪化などの影響はあるでしょう。

そういう期限切れドメイン名を別人が再登録することを「ドロップキャッチ」と呼びますが,そんな事例が多数発生しています。その多くが、どうも真っ当な理由ではなくて、誤解してアクセスしてくるのを期待していそうな怪しいケースが多いのです。

期限切れする前に名前が知られていたり、信用がありそうな組織が使っていたものの方が、ドロップキャッチに狙われやすいものです。その点では、政府機関や地方自治体が使っていたドメインでの事例が多数報告されていますが、民間企業も無関係というわけではありません。これが冒頭の「インターネットでこんなことが起こっているのを知っていますか?」のセクションで紹介した事例です。

ドメイン名トラブルにはその他にもいろいろ

ここまでお話ししたのは、ドロップキャッチと呼ばれる、真っ当な手続きで第三者がドメイン名を再登録しているのに、いろいろと困ったことが起こってしまうということでした。このドロップキャッチには、技術的な要素は一切ありません。単に手続きとルールへの考慮不足が招いた結果と言えます。

ただ、インターネットのドメイン名にまつわる問題はドロップキャッチだけではありません。この記事ではスペースの都合で省略しますが、いろいろなパターンがあることは知っておいてください。どのようなパターンでも、あなたとあなたの会社の名前・看板にキズを付けることになってしまいます。

まとめ:ドメイン名の「ご利用は計画的に」

インターネットのドメイン名は、自分たちの組織や事業、商品のアイデンティティの一つです。よい名前を考えて末永く使ってほしいと思います。

反面、一過性の理由で、登録しやすいドメイン名を気軽に登録し、そして気軽に使い捨てるのは是非やめてください。

事業やサービスを終了するときになって「ドメイン名を今後は誰が管理するか?」という相談はきっと難しいでしょう。使い始めるときに「新しいドメイン名は必要か?長期間管理できるか?」と問うてください。

・短期間で終わるキャンペーンに新規ドメイン名を使うのは止めましょう。

・新規事業や新サービスでも、本当に独自ドメイン名が必要か、長期間管理し続ける計画を立てられるかを考えましょう。既存の会社のドメイン名で本当にダメでしょうか?

・一定の制約条件のあるドメイン名の方が信頼性・安心感はあります。民間企業ならco.jp、政府機関ならgo.jp、自治体ならlg.jp、教育機関ならac.jpやed.jpなどです。

「◇◇◇◇com」や、co・go・acなどの属性を持たない「〇〇〇〇.jp」のようなドメイン名は、登録料を支払えば誰でも、どんな目的でも使うことができますが、その手軽さは手放されたドメイン名を狙う第三者にとっても同じです。

見出しに使った「ご利用は計画的に」は消費者金融業のCMで使われているのをご存知の方は多いでしょう。おそらくそのCMからヒントを得ているのだろうと推察しますが、インターネットの運用管理やドメイン名管理のコミュニティイベントなどで発せられている警鐘でもあります。

しかし、まだまだ届いてほしい方たちに届いていない様子です。ドメイン名の使い捨てが減り、それに起因するトラブルも減ってくれることを願っています。

関連リンク

ドメイン名を巡るトラブルを回避するために ~ドメイン名のライフサイクルマネジメント~(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)(外部サイト)

ドメイン名のしくみ(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)(外部サイト)

ドロップキャッチとは(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)(外部サイト)

ドメイン名のライフサイクルマネジメント(DNSOPs.jp)(外部サイト)

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