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1年目職員が体験!IPAが描く2050年のデジタルの未来 “Live Anywhere / 星の島の夏祭り”

2050年、AIやデジタル技術の進歩によって、我々の理想の暮らしは実現されるのでしょうか? 

この夏、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は「誰もが生きたい土地で学び、遊び、働き、暮らせる」2050年の未来を実際に体験できるパビリオン“Live Anywhere / 星の島の夏祭り”を大阪・関西万博2025に出展しました。VRゴーグルで体験する「星の島の学び舎」をメインに、夏祭りの屋台を模した5つのブースが広がります。

IPAは、「デジタルで豊かな社会」を実現するため、セキュリティの確保や人材育成、デジタル基盤の提供を担っている経済産業省とデジタル庁の政策実施機関です。IPAが思い描く2050年の未来の展示から、どのようなメッセージを受け取り、何を考えたのか。IPA1年目職員が実際に展示を体験して、レポートします。

IPAが描く2050年の未来の暮らし

ここからはIPA1年目職員である筆者がレポートします。大阪・関西万博の西ゲートから入場し、右に曲がって大屋根リングに沿って進み、今回の展示会場である「EXPOメッセWASSE」に到着しました。入口のゲートから中に入ると「星の島の夏祭り 案内所」がお出迎えです。さっそく中に進んでいきたいと思います。

川が通路に!「空とぶ宅配便」

まず目の前に現れるのは「空とぶ宅配便」です。

2050年には日本の総人口が1億人程度まで減少すると予測される中、人手不足と過疎化の問題への解決策の一つとしてドローンによる物品の輸送が検討されています。IPAはドローン利活用のためのガイドライン策定などを含めたデジタルライフライン実現化プロジェクトに取り組んでいます。

ブースでは、2025年3月、浜松市天竜川上空に開通した日本初のドローン専用航路で飛行していた実機が展示されています。現在は薬品などの軽量ながら不可欠な物品の輸送に用いられているそうです。将来的にはより重量の物品を長距離で輸送できるようになり、交通の便が悪い地域との接続、また災害時の迅速な物資輸送等に貢献してくれるかもしれません。

自分好みの味にカスタマイズ!?「星のかき氷」

次に現れるのは「星のかき氷」です。

IPAが実施している未踏事業で提案された「電気味覚を活用した新たな食物コンテンツ」をコンセプトとした展示です。将来的には電気的に味覚を刺激することで色々な味が楽しめるという、まるでドラえもんの世界のような未来を描いた展示になっています。写真のかき氷にはまだテクノロジーが用いられているわけではなく、美味しいイチゴ味でした。今後は自分で自由にかき氷の味を選べる未来がやってくるかもしれません。

身近に潜む脅威を追い払う「サイバー鬼たいじ」

続いて「サイバー鬼たいじ」のコーナーです。

デジタル技術が社会に浸透していくほど、サイバー攻撃が大きな脅威となっていくことは想像に難くありません。IPAが実施するセキュリティ事業になぞらえ、展示ではその脅威を鬼に見立てて、豆を模したカラーボールを鬼に投げつけて倒します。直接的にコンセプトが伝わりにくい展示ではありますが、夏祭りの代名詞である盆踊りも先祖を供養するための踊りであることを意識して踊っている人はもはや少数派でしょう。無邪気に鬼にボールをぶつけて楽しんでいる子どもたちを見ながら、微笑ましい気持ちになりました。

古き良き文化を次世代へ!?「つながる花火」

「つながる花火」のコーナーにやってきました。

2050年になっても日本古来の伝統技術をつないでいく、また遠くに住んでいる人々と一緒にデジタルの花火でつながる未来がコンセプトの展示となっています。スクリーンの前に立つと、自分の動きに合わせて花火があがります。きれいに花火を上げるのは案外難しく、体が小さい子どもたちのほうが感覚をつかめている印象がありました。

服の模様が七変化「へんしん模様」


ミニブースの最後は「へんしん模様」のコーナーです。

未踏事業で提案された「あらゆる衣服をバーチャル試着可能にする3Dモデリングシステム」をコンセプトとした展示です。家にいながら様々な服をバーチャル試着できるようになれば、服を着ているモデルの写真を見て「これは本当に自分に似合うのだろうか?」と悩む時間もなくなります。そんな未来を夢想しながら、白い服を身に着け、変わっていく服の模様を楽しむ展示となっています。この展示が2Dから3Dへと変わって社会に現れることを期待したいです。

2050年の未来が目の前に!?メインブース「星の島の学び舎」

そしていよいよメインブース、「星の島の学び舎」です。参加者は島に住む小学生で、この学校の生徒という設定。学校の入り口でVRゴーグルをつけて出発です。

入口から入って教室の扉を開けると、そこには橋本愛先生と一人の生徒が。朝礼が終わると、次々に先生が入ってきて、歌にのせてメッセージを届けてくれます。ふと気づくとカーテンの向こう側の景色が変わっていきます。様々な世界が一つの空間で融合していくような印象を受けました。

そして、途中まではいなかった他の生徒たちがバーチャル空間上で同じ教室に現れます。金魚や骨格標本までも一緒に踊り始め、場の雰囲気は最高潮に。

最後は生徒たちに促されて教室の外に出ると、そこにはロケットの発射台が。サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた人間中心の社会である「Society 5.0」を印象付けるアイテムとなっています。橋本先生とともに打ちあがる様子を見守って、ゴールです。

本展示のVR体験は10月に開催の“CEATEC2025 Innovation for all”でも体験することができますので、ぜひ足をお運びいただきたいと思います。

IPAが描く未来は実現可能なのか?

2050年の未来をコンセプトにしたIPAのパビリオンはこれにて終了です。

自分自身が生きたい土地で働き、暮らす。もちろん誰しもが遠く離れた場所に住まなければならないわけではありません。かくいう筆者自身も、都市部で生活するのは決して悪くないと考えています。一方で、安心してインターネットにつながれる環境で、好きな服を試着して注文するとドローンが運んできてくれる。夜にはデジタル空間に皆で集い、歌や花火を楽しむ。そんなデジタルの未来を描くことがIPAのミッションの1つでもあります。デジタル技術を用いて豊かな社会をつくり上げていく。そんなメッセージが込められていました。

果たしてIPAが描く2050年の未来は実現可能なのか?率直な感想として、2025年現在の技術から2050年の未来への「レール」が必ずしも見えてくるわけではありませんでした。2050年の未来は現実のものとして目の前に現れたものの、そこまでの具体的な道のりはまだ見えてこない、そんなもどかしい感覚がしました。

もちろん着実に進んでいる事業もあります。今回展示されていたドローンは既に一部で実用化されていますし、セキュリティ対策は絶えず取り組みが進んでいる事業です。このレールをさらに敷いていくことが、今後の目標となります。

そして最後に、私自身が描く2050年の未来を。
今後は更なるAIの進化、そしてAGI(Artificial General Intelligence)の登場が予測されています。そのとき、恵まれた一部の人々だけがAIを使えるような社会にならないよう、インフラとしてAIを誰もが使える仕組みを整えることが求められます。皆がAIとともに歩める社会を目指して、一職員として志を持って精進したいと思います。

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