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自社のDX進捗、見える化!DX推進指標でビジネスを加速させる

2025年5月にIPAが公開した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2024年版)」。
各企業が提出した自己診断結果を分析し、提出企業の全体傾向をはじめ企業規模別や先行企業、2年連続で提出している企業の特徴などをまとめたレポートです。
その内容から、日本のDXの現状を見ていきましょう。

数字で見る日本のDX

まず知りたい DX推進指標とは何か?

DX推進指標は企業の経営とITの両面から評価します。評価は6段階からなる成熟度レベルで行います。指標の内容によって表現は異なりますが、おおよそ以下の内容です。

レベル0: 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取り組みに至っていない
レベル1: 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまる
レベル2: 全社戦略に基づく一部の部門での推進
レベル3: 全社戦略に基づく部門横断的な推進
レベル4: 定量的な指標などによる持続的な実施
レベル5: グローバル競争を勝ち抜けるレベル

つまりレベル0は未着手、レベル5を達成すればグローバル競争を勝ち抜くことができるDX先行企業です。DXに関する取り組みをちょうど始めたばかりであれば、レベル1といったところでしょうか。この成熟度をDX推進指標の各項目に当てはめて、自社のDX推進状況を自己診断していきます。

企業はIPAが配布している自己診断フォーマットを入手・記入し、現状を評価した現在値、3年後の目標である目標値を設定します。これにより、自社の課題を把握し、次のアクションにつながる気づきを得ることができます。

また、自己診断結果をIPAに提出した企業には、他の企業のDXの推進状況と自社のDXの取り組み状況を比較できるベンチマークレポートが無償で提供されます。ベンチマークレポートを活用すると全国での位置付け、業界内での位置付けが分かり、次に取り組むべきステップに対する理解を深めることにもつながります。

DX推進指標を利用することにより、DXへの取り組みに関する状況を自己診断で測定できるだけでなく、ベンチマークにより、全体における自社の位置づけもわかり、効果的に自社のDXの進捗状況を評価することができます。

日本のDX推進状況 全体傾向

2018年に経済産業省が公開した「DXレポート」で提唱された「2025年の崖」。その「2025年の崖」を目前に控えた2024年の日本のDX推進状況はどうだったのか、DX推進指標自己診断結果分析レポートの数字を見ていきましよう。分析レポートでは、2024年1月~12月の1年間に提出された自己診断結果のうち、分析対象である1,349件の企業の自己診断結果についてまとめています。

DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2024年版)より作成

1,349件の全企業の現在値の平均では、経営視点指標が1.66、IT視点指標が1.69と、わずかながら経営面よりもITの面が高い結果となりました。しかしその差はわずか0.03 に留まり、企業は経営面・IT面の両輪でDXに取り組んでいることが分かります。

継続的かつ定期的な現状・課題の把握が鍵

経営面・IT面の両輪でDXを進めている企業の例として、2年連続で自己診断に取り組んでいる大企業は年を経るごとに、どちらも現在値の成熟度が向上しています。長期に渡ってDXに取り組むとともに、DX推進指標の活用など、継続的かつ定期的に自社のDXの現状や課題を把握・共有したことが、成熟度の年々の向上につながったと考えられます。DX推進指標 自己診断結果分s根木レポート(2024年版)より作成

そして2年連続提出企業の目標値は3.95と成熟度4に近づいています。成熟度4は、全社戦略に基づく持続的実施です。このことから、継続して自己診断に取り組んでいる企業の多くが、全社的かつ持続的にDX推進のための取り組みを進める目標の到達が視野に入ったことがわかります。

DXへの取り組みトップ5とワースト5

自己診断結果を提出した企業がDXで最も取り組んでいる項目はどこでしょうか。また、反対に取り組めていない項目はどこでしょうか。分析レポートの数字から、全企業における現在値と目標値の差と差分が小さい・大きい指標の上位5位を紹介します。目標との差が小さければ、DXが計画通りに進んでいる、目標との差が大きければ、いまだ取り組む余地がある状況だと考えられます。

DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2024年版)より作成

2024年は、「プライバシー・データセキュリティ」、次いで「人材確保」が現在値と目標との差が全指標の中で小さいものの上位にランクインしました。プライバシー・データセキュリティは他の指標と比べて現在値の平均が最も高く、取り組まれていることが分かります。これは、プライバシーやセキュリティの重要性が社会的に浸透していることが理由だと考えられます。

反対に、目標との差が開いている項目はどれでしょうか。

DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2024年版)より作成

指標において目標値と現在値の差が大きい項目を上の表に表しています。IT投資のための評価やDXのための投資意思決定、そしてDXによって創出される価値をどのように評価するかなど経営視点での指標が多く見られます。

ここから企業の傾向として、DXのための新たな評価の仕組みや投資意思決定、予算配分の仕組みの構築や人材の活用などはこれから、もしくは課題を抱えている状況だと考えられます。DXのための経営の仕組みや在り方など、経営面のDX戦略推進が今後充実していくことが望まれます。

DX推進指標は「健康診断」 年1回の定期診断を

DX推進指標とそのガイダンスでは、DX推進指標を用いた自己診断は健康診断における問診票や血液検査のような役割であると説明しています。大事なことはDX推進指標を活用して、まず自社の現状を把握し、自己診断の結果を踏まえ、自社の遅れている部分、弱い部分、あるいは伸ばしていきたい部分を関係者で共有し、DX実現のために議論することです。35項目の指標をひとつひとつ確認しながら、『これはまったく取り組めてないな』『なるほど、こういう指標があるのか、意識もしてなかったな』などひとつひとつ確認しながら議論していきましょう。

そして改善のためのアクションを検討・実施した後に、自己診断による再評価を行うことで、長期的に改善サイクルを回していくことも重要です。年1回のDX推進指標による自己診断を活用して持続的なDXの実行に繋げていきましょう。

2025年9月・10月は「DX推進指標」の集中実施期間です。 


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