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【地域DX】DX推進事例 5選─あなたの地域から始めてみよう、地域DX

DX事例

急速に進行する人口減少と高齢化の中で、日本の地域社会は今、重大な転換点を迎えています。地域の抱える医療・交通・教育・防災などのさまざまな課題が、人口動態によってますます深刻化し、今後さらに地域の社会や経済に影響を与えることでしょう。

このような状況の中で、地域課題を効率的かつ持続的な方法で解決する鍵として、「地域DX」が大きな可能性を秘めています。

そこで今回は、地域DXが求められる背景を振り返りつつ、地域DXを進めるための具体的な事例を紹介します。

なぜ地域DXが必要なのか

地域DXとは

そもそも、地域DXとは何でしょうか。本筋に触れる前に、確認しておきましょう。

地域DXと一口で言っても、自治体DXと地域社会DXの2つの側面があります。

行政手続のデジタル化や行政内部のデータ連携など、行政サービスの効率化を図るのが「自治体DX」です。これにより、地域住民の利便性向上や行政の業務効率化が期待できます。一方で、各地域が抱える地域特有の課題を、デジタルの力で解決・改善を図るのが「地域社会DX」です。医療・交通・教育・防災など…地域ごとに抱えている課題は異なります。地域内のさまざまな組織や企業と連携しながら、持続可能な地域社会の実現を目指しています。またこれらの取組は、社会的な課題解決に留まらず、地域経済や産業の活性化にも寄与するため、地域企業の競争力向上など経済面でも重要な役割を果たしています。

以降、本記事では「地域社会DX」を中心に扱っていきます。

地域DXが求められる背景

DXといえば、企業の業務効率化やデータ活用といった企業DXを想像する人も多いかもしれません。では、地域のDXを進める必要性は何でしょうか。

その背景には、人口動態の問題があります。厚生労働省の「人口の推移・人口構造の変化」によると、現在の日本の総人口は1億2380万人ですが、2070年には9000万人を下回り、一方で高齢化率は現在の29.3%から39%になると推計されています。

さらに国土交通省「国土のグランドデザイン2025」によると、地方圏の生産年齢人口は減少傾向にあり、うち高齢者の割合が増加する見込みです。このような人口減少及び高齢化の進行は、社会や経済に甚大な影響を与えます。例えば、農業従事者の減少や、食料自給率の減少、空き家の増加、GDPの停滞など、現時点でも問題になっているものもあります。このまま人口減少が続けば、これらの問題はさらに深刻化し、地域で抱えている課題の“幅”や“深さ”が増していくことでしょう。

参考:国土交通省「国土のグランドデザイン2025」地方圏人口は、東京圏・名古屋圏・大阪圏の人口を除いた人口

また、経済社会総合研究所の2022年の経済活動別総生産を見ると、付加価値がより高い第2次産業や第3次産業が、東京都や大阪府、愛知県、福岡県などの大都市に集中していることがわかります。経済圏で見ても、このような大都市の企業に地方経済が依存し過ぎているという点も地域経済の課題です。

参考:経済社会総合研究所「県民経済計算(平成23年度 - 令和4年度)

このような地域の抱えるさまざまな課題に対応するため、従来は人員や労働時間を投与することで解決してきました。しかし、人口が減少する局面で、そうしたマンパワーに依存した方法から脱却しなければなりません。そこでデジタル技術を駆使し、効率的かつ持続可能な方法で課題を解決すること、つまり地域でDXを進めることが、今後の地域社会に必要なのです。

地域DX推進ラボとは

では、地域DXをどう進めていけばいいのか。その足掛かりになるのが、「地域DX推進ラボ」です。

「Society5.0」の時代に向けて、デジタル技術等を地域社会全体に普及・浸透させ、地域産業・企業の競争上の優位性を確立させるなど、地域社会全体でのDX実現が求められています。そこで、経済産業省及び独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によって、2022年に各地域のDX実現に向けた取組を加速させることを目的に、地域の多様な機関が連携して地域経済の発展やウェルビーイング向上を目指す「地域DX推進ラボ」が制度化されました。

現在では、全国43の地域が地域DX推進ラボとして選定されています。これらのラボの取り組みは、地域DXの先進事例として優良な事例が多くあります。

地域DXを進めていくためには、地域の課題を見つめ直し、地域全体で解決策を見出していくことが重要です。これから紹介する「地域DX推進ラボ」や自治体での地域DXの事例の中には、今読んでいるあなたの地域と同じ課題を抱えているかもしれません。解決へのヒントとして、次の取組事例を読んでみてください。

地域DXの取組事例

自治体による地域DX事例

〈淡路市〉

住民データの活用による住民の健康増進及び社会保障費の適正化

淡路市では平成22年度から、住民主体で週1回公民館などに集まり体操を行う「いきいき100歳体操」を実施し、介護予防事業に取り組んでいました。しかし、平成27年度に後期高齢者医療保険の骨折に関する医療費が県内で最も高いことが判明し、事業の効果に対する疑念が生じたことをきっかけに、データ分析を活用して健康寿命延伸と社会保障費抑制に向けた取り組みを始めました。

「新たな情報収集にこだわるより、すでにある情報を活かして効果を検証する」アプローチで、まずは体操の数年分の出欠情報をデジタル化し、国保・後期高齢者医療の「国保データベース」と連携して体操参加者と非参加者について医療・介護費を年齢ごとに比較しました。その結果、骨折率に明確な差は見られなかったものの、参加者の方が非参加者に比べ、医療費・介護費が低い傾向にあることが初めて明らかになりました。現在では、データ分析の範囲をさらに広げ、歩行速度と骨折率の関係性を明らかにし、骨折予防のための指針策定に役立てたり、健康診断の受診有無と健康状態の関係を分析し、受診勧奨にも活用したりしています。
(出典:淡路市IoT推進ラボ

〈藤枝市〉

購入履歴による食生活提案・ゴミ回収ルート最適化

藤枝市では、異業種・異分野間の技術やアイデア、データなどを組み合わせる「オープンイノベーション」の推進により、地域課題の解決に取り組んでいます。また、市役所の庁内各課へのヒアリングなどにより、抽出された地域課題からテーマを決めています。今回は「健康」「ごみの戸別回収を対象とした、回収ルート最適化」という2つのテーマを取り上げます。

「健康」をテーマにした取り組みとして、食料品の購買履歴から栄養傾向を分析し、食生活の提案を行うアプリの実証実験を実施しました。この背景には、「県中部地区の中でも高血圧の人が非常に多い」という健康課題があります。その対応として、食生活の改善に注目し、実証実験を行いました。

「ごみの戸別回収を対象とした、回収ルート最適化」というテーマでは、高齢者や障害者を対象に行っている市の個別集荷サービスにおいて、利用者の住所に応じて最適な車両数とルート順を自動で振り分け、収集車用ナビアプリと連携することで、ドライバーは表示された順番通りに走行するだけで効率的に集荷ができる仕組みを構築しました。今後は課題設定のプロセスから、アイデアソンなどの機会を作り、市民に参画してもらうなどを検討しています。
(出典:藤枝市IoT推進ラボ

〈横浜市〉

実証実験のためのフィールド(実験場)調整の支援

横浜市のIoTなどを活用したビジネスに向けた交流、連携、プロジェクトの推進、人材育成の場となるべく、同市では参画企業による実証実験のためのフィールド(実験場)調整の支援に取り組みました。

企業が実証実験フィールドを探す際には、フィールドとの調整に多くの労力と時間を割くことが一般的で、開発プロジェクト自体が頓挫してしまうケースも少なくありません。また企業側は実証実験フィールドを使用する際には、まず「どういう手順で、どこに、何を申請したらよいのか」、見当がつけられないというケースもあります。一方で、実験を引き受けるフィールド側は、実証実験を通じて、施設内の課題を解決する新たな製品・サービスを体験できるなどのメリットがあります。そこで、企業が開発中の製品の実験フィールドを行う際に、実証フィールドの候補を企業に提案し、行政の関連部署や施設側との調整役を担うことで、企業とフィールド、双方のマッチングを行っています。それにより、企業側は製品開発や実験の準備に注力できるようになり、実証実験実施のハードルが低くなりました。
(出典:横浜市IoT推進ラボ

地域ラボ推進ラボ事例

〈埼玉県DX推進支援ネットワーク〉

ITベンダーのマッチング支援による県内企業のデジタル化とDX推進

埼玉県内の、特に中小企業においては、DXやデジタル化に対応してくれるITベンダー探しで苦労しているケースが散見されていました。そこで、県内企業のデジタル化とDX推進を目的に、DXコンシェルジュによる個別相談と、280社以上のIT企業とのマッチング支援である、埼玉DXパートナーマッチングサービスを始めました。

埼玉県内は中小企業や小規模事業者が多く、そうした企業では中堅ITベンダーや大手商社による提案内容のレベルや予算感がうまくマッチしない場合があります。埼玉DXパートナーの中には比較的小規模なITベンダーの登録もあり、小さな予算で小回りの利くサポートを売りにしている企業および事業者もあるため、双方のメリットになっています。

結果、1年間の相談件数は約300件、相談企業数としては約100社まで、順調に数をのばしています。そのうち6割ほどがパートナーマッチング支援のフェーズに進んでいます。今後は、相談企業のデジタル化の段階に応じた対応も実施できるようコンシェルジュを増員し、伴走支援等、よりきめ細かな対応を実施していく予定です。
(出典:埼玉県DX推進支援ネットワーク

〈堺DX推進ラボ〉

「堺DX診断」による地域ぐるみのDX支援を通じた企業価値向上

市内事業者が自社のデジタル経営の推進状況を把握し、デジタル化およびDX推進に取り組むきっかけとするため、市内の支援機関等と広く連携した「堺DX診断」という独自の取り組みを実施しています。

「堺DX診断」では、「経営戦略」や「組織体制」など、デジタル化に関する6つのカテゴリーの各5問の設問に回答することで手軽に自己評価による自社のデジタル化の現状を診断できます。そして、蓄積した事業者からの回答データを各機関で共有し、診断で把握された課題に対して、市内の支援機関等が得意分野を持ち寄り、地域ぐるみでデジタル化およびDX推進を支援しています。企業の現状把握や課題共有など、企業のデジタル化の第一歩として活用されています。これらの取組から、2023年に地域DX推進ラボに選定されました。

その後、市内企業のデジタル技術を活用した新規事業創出やビジネス変革等のトランスフォーメーションへの挑戦を後押しする「堺 NeXt Drive」を2025年に実施しています。デジタル技術による新規事業創出方法に関する講座・ワークショップの提供や、堺DX推進ラボ参画機関、堺市等支援策との連携支援などを行っています。
(出典:堺DX推進ラボ堺 NeXt Drive

あなたの地域でも「地域DX」始めてみませんか

これからさらに深刻化する人口減少や高齢化といった人口動態は、避けがたい現実となっています。こうした状況の中で、そんな日本に今必要なのは、持続可能な社会を実現することであり、その手段としてDXがあります。

そして、DXの主体は、企業に限られる必要はありません。

地域経済の活性化や地域住民のウェルビーイングの向上を通じて、持続可能な地域社会を作り上げる手段として、地域DXの導入は非常に重要です。今回紹介した事例を参考にして、まずはあなたの地域から「地域DX」の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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