デジタルで人が辞めなくてもいい会社に 創ネットの社員のためのDX
DX事例DX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれているなかで、「どうやってDXを進めていけばいいかわからない」「デジタル人材が社内にいない」などの課題を抱えている企業も多いでしょう。
本連載では、DX先進企業に事業の進め方や課題、苦悩などをインタビュー。第12回となる今回取り上げるのは、創ネット(そうネット)株式会社です。
創ネットは、福岡県福岡市に本社を置き、工場のオートメーション化を進める機械の販売事業を行っています。
同社は2023年7月に経済産業省が認定する「DX認定事業者」に認定されました。また、日本の中小企業の規範となる DX 推進態勢を構築したとして、2023年のITコーディネータ協会表彰で優秀賞(独立行政法人情報処理推進機構理事長賞)を受賞しています。
IT部門のない同社がなぜ、DXを進め、外部から認められるほどの取り組みを進められたのでしょうか。社長自らが率先してITを取り入れる、トップダウンのDX推進について、同社を率いる小口幸士社長にお話を伺いました。
とにかく現場にITを導入 定着させるための焼肉キャンペーンも
―― DX推進のきっかけを教えてください。
最初にITツールを導入したのが、今から12年ほど前です。当時、私は営業部長でした。
うちは商社なのでメーカーにさまざまな書類を提出しなければならなかったり、会議の資料をまとめたり、とにかく営業の仕事は書類を作ることが多いんです。当時は年賀状の送り先の管理なんかもExcelを使っていました。
こういった作業を当時は私自身が行っていました。うちの会社は同族経営なので、経営者の身内である私は大量の書類作業もしかたなくやるけど、他の社員にはさせられないなと思ったんです。そこで、この書類作業の負担を減らすために、ITツールを導入してみようと思ったのがきっかけです。
最初に導入したのが、クラウドの営業支援システム(SFA)です。いまでこそCMなどで色々と名前を聞きますが、当時は本当に世の中に出始めた頃だったと思います。
うちは商社ですので、営業の顧客管理や商談情報の管理があります。当時はこれもExcelでやっていました。今はスプレッドシート等でみんなが同時に書き込めますけど、昔はExcelをグループウェアにあげて、誰かがダウンロードして書き込んで保存して、次の誰かがダウンロードしてって……
そんなやり取りがわずらわしくて、営業支援システムを導入しようと思ったんです。
同時に社用携帯も当時最新型のiPhoneにしました。当時から、営業支援システムのiPhone用のアプリがあったんです。わざわざパソコンで営業日報を打つのは面倒くさいじゃないですか。だから、スマートフォンで手軽に入力できるぞということで。
正直、「DXをやろう」と思って始めたわけではないです。ITツールをひたすらに使ってきたのですが、たまたま世間に「DX」という言葉がでてきて、私たちの会社でやっていることが「DXだね」と言われるようになりました。
ですので、私たちはDXをしているという認識ではないんですよね。
―― 新しいことを始めると現場から反発があったりしますが、すんなりと受け入れられましたか?
定着を図るためにキャンペーンなんかをしましたね。たとえば焼肉キャンペーンです。営業支援システムにちゃんと入力したら焼肉をごちそうします、とか。そういったユニークなキャンペーンを私が考えたり、社員が考えたりして徐々に定着を図っていきました。私を含め、みんなで一緒にやっていこうという感じで。
実際みんなにも使ってもらうと、いちいちExcelを開いて保存して次の人がまたExcelを開いて……というようなこともないし、外出先でも使えるし、とクラウドの便利さを実感してもらいました。
また、クラウドの重要性は、2005年の福岡県西方沖地震で認識しましたね。当時、うちの会社もかなり揺れて、会社に置いていたサーバーが棚から落ちたりしたんですよ。幸い大きなダメージはなかったのですが、もしサーバーが壊れて使えなくなったら会社も大変なことになっただろうなと思って。
オンプレミスだと金銭的にも人的にもコストがかかるし、中小企業には難しいなと思ったんです。そうなったときにクラウドだと会社にサーバーを置かなくていいし、月額だし、ということでクラウドのほうがいいなと。
働きやすい会社をつくるため、社員のためのDX
―― 現在進めているDXの取り組み内容を具体的に教えてください。
工場用の機器や装置を扱う私たちの業界には、統一されたJANコードのようなものがありません。そのため、商品の管理がとても大変なんです。しかも何十万、何百万点と商品があるところで、お客さんに売れるものの傾向を知ったり分析できるソフトもないんです。たとえば何十万点も商品があると、ある部品が先月から注文が来てないぞ、とはなかなか気がつかないんですよ。
そういった悩みを解決するための分析ソフトを作っているところです。
今と過去を比べたときに、当然お客さんごとの売上粗利はすぐ見られます。しかし、その中で販売している商品Aの売上は去年と比べどうなったか?さらに商品Bはどうだったか?などはなかなか見えません。
もし、とあるお客さんが競合他社に流れたとして、売上が減りきってから挽回するのはすごく難しい。早い段階で、この商品の受注数が減っているよ、と機械が自動的に教えてくれる仕組みを作りたいと思っています。
そこで、お客さんを起点とするのではなく、取り扱っている商品を起点とした分析ができるようなソフトを、外部のシステム会社に頼んで開発しています。これは外販もしていこうと思っています。
また、営業の業務としては、先ほど話した営業支援システムの導入のほかに、マーケティングのデジタル化を積極的に行っています。顧客の新規開拓を目的として、自社サイト以外にも「九州 制御盤 設計・製作.com」のようなサイトを立ち上げたり、メールマガジンも始めました。
―― デジタル化による事業の成功とはどのようなことであると考えていますか?
事業の成功の定義が難しいので一概には言えないのですが、強いて言えば企業価値が上がることでしょうか。
これまでのさまざまなデジタル化の取り組みによって、社員の働き方が変化しています。たとえば、うちの女性社員で、ご家族の都合で沖縄に引っ越してからもテレワークで働いてもらっている方がいます。昔だったら、普通は退職となるじゃないですか。デジタル化を推進することで、人が辞めなくてもいい会社になる。
人材不足の今、人が辞めると会社にとってダメージがとても大きいですから。
だから成功というのは、事業がうまくいってどんどん売上が上がることとは別だと思うんです。会社で働く人が働きやすくなって、企業価値が上がる。それが成功だと思っています。
将来は業界内の情報をつなげて社会課題を解決
―― これから変革に向けて動き出す方に向けてのアドバイスをお願いします。
人材不足が世の中で叫ばれていますが、人が辞めてくよくよするならDXをしろ、ということですね。人がいないと嘆くなら、もうテクノロジーに頼るしかありません。
人を起点にして、人のためにデジタル化する。会社は、私たちオーナーのためではなく、やっぱり社員のための会社じゃないですか。会社そのものが組織である以上、人が起点となるべきです。
私たちは工場のオートメーション化を行う機械を商品として取り扱っているので、もともとそういう感覚があるのかもしれません。機械でできる仕事は機械にまかせて、人はもっとクリエイティブな仕事、考える仕事をやっていったほうがいいです。
―― 今後はどういった方向で事業を展開していく予定ですか。また、未来に対して期待していることはありますか。
販売事業にかかわる単純作業はできる限り機械化していきたいですね。注文が来たら自動で入力できるようにもやっていきたいですし。それと、同業者と横のつながりで情報共有ができるようになると、この仕組みをもっと活用できるようになると思います。
たとえば、商品をお客さんに届けるときは、宅配業者に頼むときもあるし、営業が直接持っていくこともある。これは同業者がみんなやっていることです。
しかし、各社がばらばらに商品を届けるのではなく、ひとつの箱にA社からの商品もB社からの商品もまとめて入っている。こういった仕組みができれば、社会課題であるSDGsや、運送業者の人手不足にかかわる物流問題の解決にもつながると思うんです。
そういった仕組みは、自社だけでなく他社とも情報がつながらないと絶対にできませんよね。
いまは各メーカーが独自の品番やコードを使っています。それを業界で統一した規格を作れれば、私たちの仕事はいっそう楽になると思います。
これからは仕事に合わせた機械をつかうのではなく、機械に仕事を合わせる時代になってくると思います。
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