DX銘柄2026事例から紐解く!DX成功の方程式 ~先進事例で学ぶ、変革の歩み方~
DX事例 DXとは
DXは、終わりのない険しい道のりです。だからこそ、適切なタイミングでマイルストーンを再設定し、常に目標意識を持って推し進めていくことが重要です。
この記事では、DX推進のマイルストーンのひとつである「DX銘柄」と、本制度に選定された先進企業の事例についてご紹介し、その変革を成功させてきた企業における共通点は何なのか、明らかにしていきます。本記事を読んで、DX推進の一助になれば幸いです。
DX銘柄とは?
経済産業省・東京証券取引所・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、DXを推進するための仕組みを社内に構築し、その成果・実績を価値向上に昇華させている企業をDX銘柄として選定しています。東京証券取引所に上場している企業が対象となります。
さらに、DX銘柄の中でも特に優れた取り組みを行っている企業を「DXグランプリ企業」、その取り組みを継続している企業を「DXプラチナ企業」として選定しているほか、DX銘柄に選定されていない企業の中から注目されるべき取り組みを行っている企業を「DX注目企業」として選定しています。
各概要は以下のとおりです。
- DX銘柄:デジタル技術を前提として、ビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていくDXに取り組む企業。
- DXグランプリ企業:DX銘柄選定企業のうち、特に優れた取り組みによりデジタル時代を先導する企業。
- DXプラチナ企業:特に傑出した取り組みを継続している企業。3年連続でDX銘柄に選定されている、かつ過去にDXグランプリに選定されている企業から選定される。選定期間は3年間。
- DX注目企業:企業価値への貢献において注目されるべき取り組みを実施している企業。
DX銘柄2026から見る選定ポイント
DX銘柄は、経済産業省が打ち出している「デジタルガバナンス・コード」をもとに質問項目が設定された「DX調査」の内容で評価されます(※DX銘柄に選定されるためには、別途「DX認定」の取得が必要ですが、DX調査への回答自体は誰でも可能です)。デジタルガバナンス・コードとは、経営者が企業価値を向上させるために実践すべき事柄を取りまとめたものです。これらは、主に3つの視点・5つの柱に分けられます。
<3つの視点>
- 経営ビジョンとDX戦略の連動
- As is – To beギャップの定量把握・見直し
- 企業文化への定着
<5つの柱>
- 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
- DX戦略の策定
- DX戦略の推進
・組織づくり
・デジタル人材の育成・確保
・ITシステム・サイバーセキュリティ - 成果指標の設定・DX戦略の見直し
- ステークホルダーとの対話
(引用元:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」2024年)
これらの5つの柱は、(1)基本的事項(①「柱となる考え方」及び②「認定基準」)と、(2)望ましい方向性の2つの区分で構成されており、その中でも(2)望ましい方向性がDX銘柄の評価・選定基準となっています。
(引用元:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」2024年)
また、DX銘柄2026では、昨年以前に比べ、企業の「AX(AIトランスフォーメーション)」が特に着目されました。AIの利活用を前提に、急速な技術進歩をとらえつつ、機動的・抜本的に変革の範囲を拡充し、その質・スピードを高める企業がより一層評価されています。
DX調査参加・DX銘柄選定メリット
DX銘柄への選定はハードルが高いものの、選定によるメリットは大きいです。併せて、毎年行われるDX調査に回答するだけでもさまざまな利点があります。
フィードバックレポートの獲得
選定有無にかかわらず、DX調査に回答した企業は、事務局からフィードバックレポートがもらえます。本レポートには、自社スコアとともに全体平均・業種平均・DX銘柄平均等のベンチマークが記載されているため、DX推進における自社の立ち位置を見つめ直すことができます。
選定企業や関係者との接点創出
DX調査参加企業は、例年開催している「DX銘柄選定企業発表会」に招待されます。発表会には選定企業や関係団体が集まるため、企業間の交流や情報交換の機会が得られます。
投資家からの信頼性向上
DX銘柄は公的機関と東京証券取引所によって選定されるため、対外的に高い信頼性を得られます。また、中長期的に企業価値が向上する企業として、投資家から注目されやすくなります。現に、DX銘柄選定企業の株価は日経平均株価よりも伸長しており、市場でも評価されています。
社外・社内広報への好影響
DX銘柄に選定されると、メディア報道や経済産業省の公式サイトに企業名が掲載されるため、大きなPR効果があります。自社のDX戦略の先進性や経営改革への積極性について対外的にアピールできるため、業界内での競争優位や優秀な人材の採用力向上に繋がります。加えて、「選定された」という事実が、社内のモチベーションアップにもなります。
DX銘柄選定企業の事例3選

さて、本記事では、DX銘柄に選定された企業のDX事例を3つご紹介します。DX先進企業が一体どのような取り組みを行っているのか、一緒に見ていきましょう。
株式会社ミスミグループ本社
機械部品の製造・販売における、メーカー・流通という2つの事業をデジタルで支え、独自のビジネスモデルを進化させ続けるミスミグループ本社は、「ものづくり産業を支えるプラットフォーム」として立場を確立しています。
設計者が数多くの部品の中から最適な商品を探し出す手間、購買部門が納期を管理する事務作業など、至るところに非効率なプロセスが存在するものづくりの現場において、顧客とサプライヤー双方をつなぐ役割をDXによって果たしています。そのDX推進の源となっているのは、「カスタマー・オブセッション(顧客への執着)」の理念です。
例えば、顧客固有の部品であっても、ECサイトで自身の設計に合わせてパラメータを指定すれば瞬時に型番発行+パラメータ通りの部品を調達でき、一度登録すれば検索不要で発注できる仕組みを構築しました。部品ごとに図面を描いて発注する必要がある特注品の場合も、紙での発注から3DCADデータのアップロードによる発注にシフトすることで、多品種対応と確実短納期を実現しています。さらに、顧客対応チャットにAIエージェントを導入することで、「納期をずらしてほしい」「注文をキャンセルしたい」等の要望に対し、AIエージェントが基幹システムのAPIを自律的にコールして、人の手を介さずに業務をクローズできるようになりました。正解率は非常に高く、顧客からも「電話より便利だ」という声が届いているそうです。
一貫してお客様ファーストという軸を持ち、顧客体験の変革を続けているミスミグループ本社。既存ビジネスの深化だけでなく、領域を超えた新ドメインへの進出も期待されます。
キリンホールディングス株式会社
祖業のビール事業を通じ、100年以上にわたって磨き続けてきた「発酵&バイオテクノロジー」を起点に、酒類・飲料、医薬、ヘルスサイエンスの各領域で事業を展開しているキリンホールディングス。「AIとの共創」を経営の核に据え、社会にイノベーションを創出し続けるCSV経営を目指しています。そのDX戦略では、「人がやらなくてよい仕事をゼロにする(=生産性向上)」と「人と共に価値を生み出す仕事を加速させる(=価値創造)」を二本柱として、価値創造の「質」「量」「スピード」を高めています。
具体的な取り組みとして、AI ×嗜好データ×成分分析で商品開発を高度化する嗜好AI「FJWLA/フジワラ31(Flavor Judgement for Whole Liking Analysis)」の開発があります。この仕組みでは、従来熟練者の経験に頼っていた「官能評価(主観)」「成分分析(客観)」という性質の異なるデータを、統合的に学習するモデルを構築しました。味覚と化学成分の相関関係をAIによって可視化することで、「おいしさ」という定性的な価値を定量指標へと変換でき、香味開発における「再現性」と「スピード」を向上させました。また、調達プロセスでのAIエージェントや、経営会議でのAI役員「CoreMate」の導入など、最新技術を活用した業務プロセス改革を推し進め、人がやらなくてよい仕事をAIに置き換えることで、価値創造に繋がる時間を創出しています。
ヤマトホールディングス株式会社
宅急便サービス開始から50周年を迎えたヤマトホールディングスは、単なる「運送」から価値を創造する「運創」への転換を目指しています。長期ロードマップをもとに、「守りのDX」で既存コスト圧縮を図ったのち、そこで創出した原資を「攻めのDX」に転換する試みを進めています。
年間約23億個の宅配便を取り扱い、約5,900万人の「クロネコ・メンバーズ」・約180万社の「ヤマトビジネスメンバーズ」を抱えるという、膨大な顧客基盤を持つヤマトホールディングス。その強みを最大限生かすために、まずOCRや送り状発行システムの設置等により、顧客の利便性を損なわない形で荷物のデジタル化率を約94パーセントまで高めました。そしてこれらのデータを基盤に、AIを活用した配達ルートの自動設計や業務量予測の精緻化、バックオフィス業務の自動化等に取り組み、業務効率化を推進しています。また、その効率化によって創出された人的リソースを、営業や集荷等の高付加価値業務に転換させています。こうして、自社の強みをデジタル戦略により最大化することで、価値創造を実現しているのです。
今回紹介した3社だけでなく、選定企業全51社のDX事例が掲載された「デジタルトランスフォーメーション銘柄2026選定企業レポート」が公開されています。気になる方はぜひご参照ください。
DX銘柄2026選定企業レポート 【外部サイト/IPA】
DX銘柄選定企業から見るDX成功の秘訣
ここまで、DX銘柄選定企業の様々な事例を見てきましたが、これらに共通することは一体何でしょうか。先述した、選定基準の元となっているデジタルガバナンス・コードの「望ましい方向性」を満たしていることは前提として、DXを成功させる重要な鍵は一体何なのか、紐解いていきましょう。
最新技術への積極性
いずれの企業も、AIをはじめとする最新技術に対する好奇心や積極性が強いです。業務プロセスの中にデジタル技術を組み込み、業務効率化や価値創造を精力的に行っています。また、一部の部門に留まるのではなく、全社的に技術を活用するよう、様々な取り組みがなされている企業も多いです。技術のナレッジに関するリスキリング研修の設定や、市民開発を可能とするツール提供など、全社員が最新技術に触れる機会を意欲的に設けています。
目的と手段の正確な整理
すべての経営戦略に共通して言えることかもしれませんが、目的と手段を混同せず適切に捉えることも重要です。ツールの導入のみを目的とするのではなく、「何のためにDXを進めたいのか」「どのような変革を起こしたいのか」という未来をしっかり描くことが求められます。
DXのカスタマイズ
先人たちから学んだことはあくまでも参考に留めつつ、自社に合わせてカスタマイズした施策を打つことが肝要です。自社のビジネスモデルやその強み・課題を的確に分析し、その強みを伸ばしつつ課題をつぶすためにはどうすべきか、自社に向き合ってじっくり考えを巡らせてみましょう。
事例から学び、自社だけのDXロードマップを
DXの本質は、単なる効率化やツールの導入に留まらず、デジタルデータの活用による新規ビジネスの創出や企業の変革を実現することにあります。そして、DXは十人十色であり、誰かの成功事例をテンプレートとして当てはめれば必ず実現できるというようなものではありません。先進企業の事例からDX推進成功のキーを拾い集め、それを材料に自社だけのロードマップやDX戦略を描いていきましょう。
今回ご紹介したDX銘柄企業の事例は、一見華々しく見えるかもしれませんが、いずれも何年も前から地道に粘り強く変革を試みてきた関係者たちの努力の結晶であることに変わりありません。あなたもDX推進に向けて、一歩踏み出してみませんか?
関連リンク
DX銘柄 | 社会・産業のデジタル変革 【外部サイト/IPA】
DX銘柄2026選定企業レポート 【外部サイト/IPA】
デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄) 【外部サイト/経済産業省】
デジタルガバナンス・コード 【外部サイト/経済産業省】
concept『 学んで、知って、実践する 』
DX SQUAREは、デジタルトランスフォーメーションに取り組むみなさんのためのポータルサイトです。みなさんの「学びたい!」「知りたい!」「実践したい!」のために、さまざまな情報を発信しています。
DX SQUARE とは