1164社のDX推進指標自己診断結果から見る2025年はDXが進んだのか?
2019年から毎年発行されているDX推進指標 自己診断結果分析レポートの2025年版が出ました(以下、分析レポート)。どんな分析結果や示唆が示されているのかをいくつかピックアップして紹介します。また、今回のレポートと過去のレポートを見比べてみました。
DX推進指標と分析レポートとは
DX推進指標は企業の経営とITの両面から評価します。評価をする項目は全部で35個あり、それらをレベル0からレベル5までの6段階で自己診断します。企業はIPAが配布している自己診断フォーマットを入手・記入し、現状を評価した現在値、3年後の目標である目標値を設定します。これにより、自社の課題を把握し、次のアクションにつながる気づきを得ることができます。
また、自己診断結果をIPAに提出した企業には、他の企業のDXの推進状況と自社のDXの取り組み状況を比較できるベンチマークレポートが提供されます。ベンチマークレポートを活用すると全国での位置付け、業界内での位置付けが分かり、次に取り組むべきステップに対する理解を深めることにもつながります。
なお、このDX推進指標は2026年2月に構成や内容が改訂されて、より経営に直結したもの、近年重要性が高まっている要素を取り入れたものになりました。この記事で取り上げた分析レポート(2025年版)は改訂前のDX推進指標で自己診断された結果になりますのでご承知おきください。改訂版のDX推進指標についてはこの記事の末尾で触れています。
2025年版ではどんな分析結果や示唆があるのか
分析レポートでは、企業から提出いただいた多数の自己診断結果データを使った様々な分析を行い、そこから読み取れる示唆を示しています。まずは、2025年に実施された自己診断の全体感から見て見ましょう。
1年に1000社以上の企業が自己診断を実施
毎年、多くの企業が自己診断を活用されています。2025年は1,164件の自己診断結果の提出がありました。そのうち約6割が中小企業、約4割が大企業からの提出でした。
DXの取り組みはいまだ散発的な取り組みに留まっている
2024年と2025年の調査結果を比べると、全体としての結果や傾向は大きくは変わっていません。DX推進が安定期になりつつあるようにも見えます。ただ、日本全体が高いレベルで安定しているとも言いにくいので、伸び悩んでいるようにも見えます。
DX推進指標でのレベルは次の様に設定されています。

これを踏まえて具体的なデータを見てみましょう。
全項目平均値を提出企業ごとに算出し、レベルごとの分布を見てみると、レベル3未満に位置する企業が約7割を占めていました。一方で、全項目平均値がレベル4以上にある企業は全体の3%にとどまっています。
つまり、「全社戦略に基づく持続的実施」の段階(レベル4)まで達している企業はとても少なく、全体的には「一部での散発的な取り組み」に留まっていることがわかります。
2024年分の分析レポートでも各レベルの割合(分布)は若干は違いますが、多くの企業が「一部での散発的実施」にとどまっている点は同じです。つまり、日本企業のDX推進はやや改善してはいても、伸び悩んでいるといったところでしょう。
指標の項目によってどんな特徴が見られるか?
DX推進指標は35個の指標項目を設けて、自己診断をする企業にはそれらの項目ごとに結果を示してもらっています。では、その項目によって進み具合や目標到達の状況に違いがあるのでしょうか。ここでは主に中小企業の視点から見てみましょう。
IT視点の指標項目は?
まず、IT視点の指標項目から見てみます。
現在値が最も高いものは中小企業でも大企業でも「プライバシー、データセキュリティ」でした。企業規模に関わらず、以前から情報セキュリティは既に重要な課題になっているのでしょう。
逆に、現在値が最も低い項目は、中小企業では「IT投資の評価」でした。ITへの投資をどのように評価したら良いのかに課題を抱えている中小企業は多いだろうと推察されます。大企業の場合に最も低い項目は「スピード・アジリティ」です。こちらも大企業の特徴・課題が反映されているとみることができそうです。
経営視点の指標項目は?
では、経営視点の指標項目ではどうでしょうか。
中小企業で、現在値が最も高い指標は「事業への落とし込み」です。経営と事業が近いことを反映しているのでしょう。逆に中小企業で最も低いものは「事業部門における人材」です。人材課題の解決が難しいことを示しています。
2024年のレポートと比べて…
分析レポートでは、中小企業と大企業の比較、DX認定取得企業と未取得企業の比較、先行企業と非先行企業の比較(自己診断の現在値平均が高いグループと低いグループの比較)をしています。今回の2025年分の分析レポートと2024年分を比べてみると、興味深いことがわかってきます。
DXが比較的進んでいるであろうグループでは2024年と2025年でかなり似通っています(足踏みしています)。これに対してまだ進んでいないであろう発展途上のグループの方が比較的に改善していることがわかります。つまり、底上げされているという明るい傾向も感じられます。その例を分析レポートに示されたデータから見てみましょう。
低レベル企業の割合が減少 (高レベル企業は微増)
企業ごとに全項目平均値(現在値)を算出した結果を、レベルごとの分布で見てみます。全体の平均は2024年から2025年で改善はしていますが微増です (+0.3程度)。また、経営視点・IT視点がほぼ同じという傾向は変わりません。
平均値が高いグループ(レベル3以上の企業)の割合が微増なのに対して、低いグループ(レベル0以上1未満の企業)の割合が、はっきりと減っていて “底上げ”されていることがわかります(2024年は31%→2025年は18%)。

レベル3未満のグループの平均値が前年よりも改善
前述したのはレベル毎の割合の変化でした。分析レポートでは、全項目平均値が3以上の企業を「先行企業」として、先行企業とそれ以外(非先行企業)に分けた分析もしています。そもそもレベル3未満/以上 で分けているので、それぞれのクラスの中での傾向はそれほどは変わらないのではと想像します。それなのに、非先行企業だけを集めたグループの平均値が若干上がっているのが興味深いところです(+0.26)。これも底上げされていると見えるひとつです。

大企業よりも中小企業の平均値の方が伸びが大きい
2024年から2025年で、大企業の全指標平均(現在値)は+0.12の微増ですが、中小企業では+0.29でした。どちらも微増ではありますが、直近1年では大企業よりも中小企業の方が伸びています。もっとも、2024年と2025年で大企業と中小企業の提出数割合が同じではありませんので、その影響が出ている可能性はあります。

DX認定の未取得企業でも伸びがみられる
2024年から2025年で、DX認定を取得した企業の平均値はほとんど同じです(-0.03でほぼ同値)。 これに対して、DX認定の未取得企業は+0.13と微増ではありますがDX認定企業よりは伸びています。DX認定を未取得でもDX推進に向けた対応を取っている企業が多くあるのでしょう。

2025年のDX推進は進んだのか?DX推進で心がけるべきことは?
2025年のDX推進の状況は、「全社戦略に基づく持続的実施」の段階(レベル4)まで達している企業はとても少なく、全体的には「一部での散発的な取り組み」に留まっていることがわかりました。そしてこれは2024年も同様でした。やや改善はみられますが、局面が変わったというほどではありません。
多くの日本企業がDXに取り組むようになって数年経過し、足踏み感があるのも事実でしょう。このままの「低位安定」で良いわけではありません。分析レポートからは、DXを推し進めるヒントも見えてきます。
先進企業は経営面もしっかり見ている
大企業、先行企業、DX認定企業、2年連続提出企業では、いずれも経営視点指標がIT視点指標を上回っていました。これらの企業群はおおむねDXが進展している先進企業が多いと考えられます。これらの企業に共通する傾向として、経営視点の取組を積極的に進めている傾向があります。つまり、IT面だけではなくて、経営面もしっかり見ている企業が多いのが先進企業の特徴になっています。
経営面の取り組みとITシステムの取り組みは車の両輪
上記は現在の自社レベル(現在値)について見たものでした。DX推進指標では、現在値だけではなくこれから到達したいレベル(目標値)も示してもらっています。目標値と現在値の差は、今後に力を入れたい部分を示していると言って良いでしょう。これを見ると、経営視点指標およびIT視点指標はおおむね同じでした。つまり、多くの企業で「DX のための経営の仕組み」と「その基盤としての IT システムの構築」を両輪と位置づけています。そしてこれに気付いてもらえることも、DX推進指標の特徴(メリット)のひとつです。
2026年からDX推進指標が改訂されています!
冒頭で述べたように、DX推進指標は2026年2月に構成や内容が改訂されました。
今回の改訂では、企業のデジタル活用に関する国の考え方を示した「デジタルガバナンス・コード3.0(DGC3.0)」との関係も整理されて、より経営に直結した形になりました。また、データ整備、人材育成、サイバーセキュリティなど、近年重要性が高まっている要素を取り入れました。これらはAI活用に向けても前提となる要素です。さらに、DX認定との関係も整理されました。DX認定は、企業がデジタルによって自社のビジネスを変革するためのビジョンや戦略、体制を整えていることを、国が認定する制度です。DX推進指標に取り組むことで、DX認定の取得に向けて何を整えるべきかが見えやすくなります。
2026年4月より新たな自己診断での回答の受付も始まっています。みなさん自身のDXへの取り組みを、新しいDX推進指標で自己診断してみてください。
自己診断結果を提出した企業に提供されるベンチマークレポートのイメージ(変更になる可能性があります)
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