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【小売業】DX推進事例6選【スーパー・コンビニ・薬局・アパレル】

DX事例

さまざまな業種・企業において、デジタル化やDXへの取り組みが活発化しています。小売業においても例外ではありません。特に2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で消費者の行動様式が大きく変わりました。個人の消費行動と密接に結び付く小売業において、変革は重要な課題となっています。

そこで今回は、小売業においてDXが重要な理由を解説するとともに、実際に小売業で取り組まれているDXの事例を紹介します。

小売業にとってDXが重要な理由

はじめに、DXの意味や定義についておさらいするとともに、小売業がDXを推進することの重要性についてもくわしく解説します。

そもそもDXとは何か

DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術によって社会や生活の形・スタイルがよりよいものへ変わることです。2018年12月、経済産業省では「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を公表し、このなかでDXを以下のように定義しました。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

現在の業務を効率化・自動化するのみにとどまらず、デジタル技術を活用してビジネスそのものを変革していくことがDXの本質であるといえるでしょう。

変化する消費者ニーズへの対応

国内のスマートフォンの世帯保有率は90%を超え、モバイル端末によるインターネットの利用が拡大しています。消費者は多種多様な情報をすばやく取得できるようになり、モノを所有することよりも体験することに価値を見出すようになりました。現代の日本はモノが売れない時代となっているのです。

さらに追い打ちをかけるように2020年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、緊急事態宣言下の休業や営業時間短縮、宣言解除後も続いた外出自粛によって、多くの小売業が影響を受けました。人々の行動や消費動向も大きく変化しています。

こうしたモノが売れない時代、さらにコロナ禍を経たニューノーマルな時代において、小売業は時代のニーズに沿った新しいサービスや価値を創出することが求められています。そのためにも、データやデジタル技術を活用してDXを推進することは重要なのです。

人材不足

小売業における課題の一つとして、深刻な人材不足が挙げられます。小売業の常用労働者数に対する未充足求人数の割合である欠員率は、全産業よりも高い数値となっています。少子高齢化によって生産年齢人口が減少している今、人材不足の解消は喫緊の課題です。

なぜ、小売業が深刻な人材不足となっているのでしょうか。その理由として、長時間労働や労働生産性・労働装備率の低さなどがあります。これらの問題を解決するために、デジタル技術の活用によって業務の自動化・効率化を図り、従業員の業務負荷を軽減して生産性を高めていく必要があります。


小売業のDX事例集〜自社の課題解決・顧客への新しい価値提供〜

小売業のDX事例集

ここからはDXに取り組んでいる企業の事例をいくつか紹介します。スーパーマーケット、調剤薬局、アパレル、3つの業態にわたって4社の取り組み事例をピックアップします。

株式会社平和堂

滋賀県を中心にスーパーマーケットを展開する平和堂では、DXの具体的な取り組みとして発注業務におけるAI自動予測システムの導入を積極的に進めています。

店舗での商品の発注は長時間を要する作業です。この作業時間の削減を目的として、AIによる自動予測システムを日配品の売場にて試験的に導入しました。これは販売実績や気象情報などのデータを基にしてAIが日々の商品発注数を自動的に算出するシステムです。これによって発注作業時間が削減されるとともに、商品の欠品や廃棄ロスを防ぐことも期待されています。

店舗の従業員は発注にかける作業時間が減ったことで、来店した顧客とのコミュニケーションや魅力的な店舗や売場実現のための時間を増やすことができるようになります。

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社

首都圏を中心にスーパーマーケットを展開するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスでは、公式アプリによるキャッシュレス決済によって、顧客と従業員双方の満足度を高めるためのデジタル改革を進めています。

来店した顧客は自身のスマートフォンにインストールした公式アプリを使用して、購入したい商品のバーコードを読み込み、決済までアプリ内で完結することができます。顧客側はレジに並ぶ必要がなく買い物の利便性が向上し、従業員側はオペレーションの省人化・省力化を進めることで人材不足の問題が解消され、従業員一人ひとりの作業負荷を軽減することが可能となります。

日本調剤株式会社

日本全国で調剤薬局を展開する日本調剤は、急速にデジタル化が進む医療分野において企業の持続的な成長と新しい価値創出のためにDX戦略を策定しています。その中のひとつとして、誰もがオンラインによる診察、服薬指導、薬の受け取りまでシームレスに受けられるスマート医療の提供を掲げています。

スマート医療とは、IoTやVR(仮想現実)・AR(拡張現実)、ビッグデータ等の技術を用いて、本来は対面でしか行うことができなかった診療等の医療サービスをオンラインで可能にしたり、医療に関わるデータ収集・管理の自動化を行うことです。

たとえば、処方箋の電子化や、服薬指導と薬の受け取りをオンライン化する取り組みによって、患者が場所に依存せずに医療サービスを受けることができる体制を構築しています。医療サービスのオンライン化によって、患者の利便性向上はもちろんのこと、地域医療格差の改善や早期受診による病気の重症化予防も期待されています。

こうしたスマート医療の取り組みなどによって、日本調剤はコアビジネスの変革を進めています。

株式会社TSIホールディングス

多数のアパレルブランドを展開するTSIホールディングスは、ECサイトによるデジタルと販売スタッフの力で、新しい体験と新しい顧客接点の創造に取り組んでいます。

自社のECサイトをリニューアルし、販売スタッフ×コーディネイトに特化させました。これによって、販売スタッフの活躍の場をオンラインにも拡張し、評価制度改革にも着手しています。

リアルの店舗だけでなくオンライン上でも、商品の魅力と販売スタッフの魅力の両方で顧客をファン化させることを目指しています。

小売業のDX事例集〜社会課題の解決〜

小売業のDX事例集

小売業のDXで成し遂げられることは、自社の課題解決や顧客への新しい価値提供だけではありません。ここからは、社会課題の解決に向けた取り組みの事例を2社紹介します。

株式会社ローソン

全国にコンビニエンスストアを展開するローソンは、最新のAI技術を活用してサプライチェーン全体の最適化を行うことによって、食品廃棄ロス削減に取り組んでいます。

これまでは、販売期限が迫る商品の値引きは各店舗の判断に委ねており、店舗の経験値に依存した運用となっていました。そこでAIを活用し、店舗ごとにその日の在庫状況に応じた対象商品や数量、値引き額、値引き時間などを推奨することで、商品をより効率的に売り切ることができるようにしています。さらに、店舗周辺の見込み客に値引き情報を配信することで、来店喚起につなげる取り組みも実施しています。

このAIを活用した需要予測に基づく取り組みは、発注精度向上や値引き販売にとどまらず、店舗配送といった物流や工場での製造までを視野にいれてサプライチェーン全体の最適化を図り、食品廃棄ロス削減を目指しています。

イオン株式会社

全国にスーパーマーケットを展開するイオンでは、サステナブル経営の一環として脱炭素ビジョンを掲げ、人流などのデータとAIを活用したスマート空調制御の実現に向けて取り組みを行っています。

店舗の内外にカメラや温度計などの各種センサーを設置して、人流や温度、湿度、CO2濃度などをリアルタイムに測定し、データを蓄積します。その蓄積されたデータに対してAIを活用した高度な解析、学習、予測を行うことによって、人の粗密による風向風量抑制などの最適な空調自動制御を可能にしています。この取り組みによって、空調によるCO2排出量を40%削減することを目指しています。

こうした取り組みは、国際的な潮流である、従来の財務情報だけでなく環境・社会・ガバナンス要素も考慮した投資の中で、企業価値の向上につながることが期待できます。

他社の事例を参考にDXに向けた取り組みを開始しよう

消費者のニーズや価値観の変化に対応するためにも、小売業のDX推進は重要です。

企業規模や取り扱っている商材などによってDXへの取り組み内容はさまざまですが、小売業のDXは、デジタル技術による作業の自動化・省力化で自社の課題を解決するのみに留まらず、そこから新たな顧客体験や顧客接点を創出する可能性を秘めています。

DXの取り組みで重要なことは、まず「危機感」や「ビジョン」を社内で共有することです。企業を取り巻く環境を認識し、「自社にどのような課題があるか」「何ができるのか」など、今回紹介した事例を参考に検討してみてはいかがでしょうか。

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