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【物流業】DX推進事例5選

DX事例

さまざまな業種・企業において、デジタル化やDXへの取り組みが活発化しています。物流業界においても、さまざまな企業が多種多様な取り組みを行っています。

そこで今回は、物流業においてDXが重要な理由を解説するとともに、実際に物流業で取り組まれているDXの事例を紹介します。

物流業にとってDXが重要な理由

はじめに、DXの意味や定義についておさらいするとともに、物流業がDXを推進することの重要性についてもくわしく解説します。

物流DXとは

DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術によって社会や生活の形・スタイルがよりよいものへ変わることです。2018年12月、経済産業省では「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を公表し、このなかでDXを以下のように定義しました。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

現在の業務を効率化・自動化するのみにとどまらず、デジタル技術を活用してビジネスそのものを変革していくことがDXの本質であるといえるでしょう。

加えて、国土交通省は「物流DX」について、「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」資料において次のように述べています

「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること。」

・既存のオペレーション改善・働き方改革を実現
・物流システムの規格化などを通じ物流産業のビジネスモデルそのものを革新

物流は、物流業だけでなく多くの企業にとっても重要な経営戦略のひとつとして位置付けられています。物流の優位性を高めることは、企業の競争力を高めることにつながるのです。

深刻な労働力不足

日本国内の企業ではさまざまな業界で労働力不足が課題となっています。物流業界も例外ではありません。労働力不足は近年顕在化しており、厚生労働省のデータによると運輸業・郵便業の労働者不足状況は他の産業と比べても常に高い値で推移しています。欠員率についても全産業の平均以上の値であり、仕事があるにもかかわらず、その仕事に従事する人員が足りていないのです。
出典:厚生労働省「労働経済動向調査(令和4年2月)の概況」

若年層の人材確保が難しくなっている今、デジタル技術を用いた働き方改革の実現が、業界全体のイメージ向上や人材不足の解消に期待されています。

EC市場拡大と顧客ニーズ多様化による小口・宅配の増加

年々、電子商取引(EC)市場が拡大しています。EC市場は2018年には全体で18兆円規模となっており、物販系分野では9.3兆円規模まで拡大しています。EC市場規模の拡大に伴って、宅配便の取り扱い件数は5年間で約6.7億個(+18%)増加しています。 
出典:国土交通省「物流を取り巻く動向について」(令和2年7月)

そのような中で、倉庫事業や配達事業など物流の効率化は当然の課題です。より多くの荷物をスピーディーに仕分けし、顧客に届けなくてはなりません。荷物の小口化、多頻度化や生活習慣の変化による顧客ニーズの多様化が顕著になっています。また、労働力が不足している中、再配達の発生も問題になっています。現在、宅配貨物全体の約2割が不在再配達です。今後もEC市場の拡大が見込まれる中、顧客のさまざまなニーズに対応しながら効率的な物流を構築していく必要があります。

物流業のDX事例5選

ここからはDXに取り組んでいる企業の事例をいくつか紹介します。「企業がデジタルによって自らのビジネスを変革する準備ができている状態(DX-Ready)」 であることを認定された「DX認定事業者」の中から、物流業界の5社の取り組み事例をピックアップします。

SGホールディングス株式会社

佐川急便を傘下にもつSGホールディングスは、DX戦略=成長戦略としてDXの推進に取り組んでいます。その中のひとつの事例が、グループ企業でロジスティクス事業を展開する佐川グローバルロジスティクスの、佐川流通センターにおける仕分け業務のDXです。

埼玉県東松山にある佐川流通センターでは、仕分け業務に次世代型ロボットソーターを導入しました。無人搬送車により物品を搬送し仕分け作業を実現するロボットソーターの導入によって、ヒューマンエラーによる誤発送撲滅と、作業にかかる人員の27%削減を実現しています。同作業に従事していた人員を負荷の大きい作業に振り替えることで全体の作業時間が短縮され、同センター全従業員の労働時間短縮にもつながりました。

ロボットソーターの導入によって、同センターでは飛躍的な生産性の向上を実現しています。
(出典:SGホールディングス https://www.sg-hldgs.co.jp/newsrelease/2021/0804_4806.html)

株式会社日立物流

3PL(サードパーティロジスティクス)を提供する日立物流は、DX推進施策のひとつとして、IoTテクノロジーを駆使して輸送事業者の業務効率化、事故ゼロ化を支援するサービスプラットフォームを開発しています。

SSCV(Smart & Safety Connected Vehicle)と呼ばれるサービスプラットフォームは、輸送事業に関わるさまざまな情報をデジタル化し提供します。例えばドライバーの生体情報や車両の状態をセンシングし、AIで分析を行うことによって、リアルタイムにドライバーや運行管理者に警告を発信し、事故を未然に防ぎます。そのほかにも、車両管理・整備実績のデジタル化で車両稼働率の向上と管理工数の削減などを支援しています。

さらに、日立物流はSSCVで得たデータを協創パートナーと共有することで、新しいサービス・ビジネスの創出、また社会課題解決への貢献を目指すとしています。
(出典:日立物流 https://www.hitachi-transportsystem.com/jp/ir/corporate/vision/dx/)


日本郵船株式会社

国際的な海上運送業を中心とした総合物流事業を行う日本郵船では、自動車専用船の最適な運航スケジュールを割り出すための多くの課題を解決するために、運航スケジュール策定支援システムを開発しました。

運航スケジュール策定支援システムは、従来の手動計算では導き出せなかった最適スケジュールを提示することで運航担当者の業務を効率的に支援するものです。船舶ごとの運航データをタイムリーに収集する社内システムと連携し、寄港地や積み下ろし台数などの条件を指定すると、数十万通りのシミュレーションを実施して最適な航行スケジュールを提示します。

このシステムを活用することで、従来よりも迅速な意思決定が可能となるほか、ノウハウの継承にも寄与します。また、温室効果ガスの排出が最小となるスケジュールの策定も可能となり、気候変動へ対応したサービス実現への貢献も見込まれています。
(出典:日本郵船 https://www.nyk.com/news/2021/20210409_01.html)

株式会社ヒサノ

熊本県で運送業、機械機器設置業を展開するヒサノでは、従来担当者が手動で行っていた配車業務を効率化するために、「横便箋システム」と呼ばれる受発注システムをクラウド上に構築しました。

以前は横便箋と呼ばれる紙で配車情報を管理していたため、繁忙期にはオーバーブッキングが起こるなど、管理が煩雑になっていました。また、配車担当者の暗黙知によって業務が運営されており、課題が多くありました。

配車業務をシステム化することによって、配車がスピーディーに実行され、担当者間での情報共有もスムーズになりました。業務の属人化を防ぎ、社員の不満も解消されています。

詳しくはDX成功事例のインタビュー記事をご覧ください。
~「フラストレーション発、DX経由 熊本の運送会社ヒサノの変革への道のり」

ヤマトホールディングス株式会社

ヤマト運輸を傘下にもつヤマトホールディングスのDX推進の取り組みのひとつが「ECエコシステムの確立」です。EC事業者との共創による、個人間取引サービス向けの宅配サービス「EAZY」を提供しています。

ヤマト運輸と連携したECサイトなどで注文した商品は、受け取りの際に対面だけでなく、自宅の玄関ドア前やガスメーターボックス、車庫などへの置き配が指定できます。また、受け取り方法は荷物が届く直前まで変更することができます。

EC事業者とヤマト運輸のデータやシステムがAPIで連携され、配達直前までの受け取り情報の変更を可能にしています。利用者のさまざまな受け取りニーズにリアルタイムコミュニケーションで対応することによって、顧客満足度の向上が期待できます。
(出典:ヤマト運輸 https://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/customer/service/eazy/)

他社の事例を参考に、DXに向けた取り組みをはじめよう

経営環境の変化や顧客の多種多様なニーズに対応し、労働力不足を解消するためにも、物流業のDX推進は必要です。しかし、重要なポイントはデジタルを使うことではなく、顧客や社会のニーズにどのように応えていくかです。

企業を取り巻く環境を認識し、「自社にどのような課題があるか」「自社の強みを活かして何ができるのか」など、今回紹介した事例を参考に検討してみてはいかがでしょうか。

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