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これが町工場のDX 「町工場がつくった町工場の日報見える化アプリ」に大手企業からも引き合い!

製造業 DX事例

「商いの町」である大阪は、阪神工業地帯を中心として活性する「製造業の町」でもあります。
大阪府内には、金属加工や樹脂成形など、すばらしい技術を持つ中小企業、いわゆる町工場もたくさんあります。

東大阪市の株式会社サンコー技研は、IT企業と協業しながら自社のIoT化やDXを進めています。従業員30名の町工場が、どのようにDXを進めてきたのでしょうか。その取り組み事例をご紹介します。

この記事は、経済産業省・IPAが支援する「地方版IoT推進ラボ」による取材記事「町工場がIoTを使ったら新事業誕生! 『楽しく・楽に・もうかる』IoTをめざす!」を再構成したものです。

作業日報の機能だけでええのに

サンコー技研は、金型やプレス加工、トムソンなど打ち抜き系の精密加工を得意とする企業であり、プリント基板や光学部品、フィルム部材などを製作しています。

同社Webサイトを覗いてみると、「新事業」の文字が。どうも、これは打ち抜き加工関係ではないようです。実はこれ、大阪府IoT推進ラボによる支援の1つの成果なのです。さて、この新事業とは、一体、何なのでしょうか――

それは、サンコー技研が抱えていた業務課題への取り組みからスタートしました。

社会がスマートになり、市場が複雑化してくると、顧客の要求はどんどん厳しくなり、スピード感も増していくものです。そのような中、サンコー技研でも、業務効率化や生産性向上が課題となっていました。

同社では、作業日報に、生産実績やトラブル、その原因などを記載していました。
しかし、その記録は全て手書き。手書きであることが、日々多忙な業務の中で負担になっていたのです。
さらに、トラブルが生じた際などに過去の情報を振り返るには手書きの日報の中身を1つ1つ見ていくしかありませんでした。手書きの情報では、時間が経過するたび、そして担当が代替わりしていくたび、どんどん埋もれていってしまいます。

ないなら、自分らで作ろう!

QRコードをスマートフォンで読み取っている作業者の写真アプリで日報を記録している様子

「サンコー技研さんは、作業日報をデジタル化さえできたら、それで十分であると考えていたのですが、そこに特化したような、手軽な既存システムが見あたらなかったのです」と、サンコー技研のIoT診断を支援した大阪府の担当者は語ります。

既存の生産管理システムは、サンコー技研にとってライセンスコストの負担が大きい上、必要がない機能まで含んだオーバースペックなシステムばかりでした。

そこで、サンコー技研は、大阪府の運営する「大阪府IoT推進ラボ」に相談をしました。それをきっかけに、大阪府IoT推進ラボが支援し、まずは専門家による「IoT診断」で課題を絞り込んだのです。
そして、「よいシステムがないなら、自分たちで作るしかないか」と、一緒に課題解決をしてくれそうな企業を選定していきました。企業の選定には、大阪府IoT推進ラボが運営する「IoTマッチング」のしくみを使いました。

ここで縁がつながったのが、大阪市淀川区のIT企業、サン・エンジニアリングでした。
この企業は、制御システムや組み込みソフトウェアなど製造業向けのシステム開発の経験・知見が豊富であったことと併せ、モバイルアプリ開発も得意でした。

そして、サンコー技研とサン・エンジニアリングが協働で技術要件を絞り込んで、その結果として生まれたのが、工場の日報を付けるだけの、シンプルなモバイルアプリです。
情報管理にはQRコードを併用するようにしましたが、最近のスマートフォンやタブレット端末にはカメラによる読み取り機能が標準で備わっているため、読み取り機器などの機材の用意は要りません。

また、PCの操作が苦手な人でも、直感的な操作ができるモバイルアプリなら、すぐ操作を覚えて簡単に使うことができ、特別な研修も不要です。その上、モバイルアプリに振り切ったことで、システム開発側にとっても開発期間短縮などのメリットがありました。

自社の業務効率向上から、新事業を展開

「スマファク!」のイメージボードサンコー技研のアプリ「スマファク!」

サンコー技研は、手書きで行っていた日報作成を、簡単なモバイル端末での入力に置き換えただけで、幅広い業務改善が実現できました。記録業務の手間削減や記録ミス削減が実現できたことと併せ、記録のトレーサビリティの確保、工程ごとの正確な時間管理が可能になりました。

また、社内の全員が同じ実績データをいつでも見られるようになったため、誰もが社内の工程全体を見渡せるようになり、自発的な作業改善が促進されて生産性向上につながっているということです。

さらにこれを「スマファク!」と名付け、2020年4月から外販も開始。

これが、サンコー技研の新事業となったのです。さらに協業したサン・エンジニアリングにとっても、これが新サービスになりました。「町工場がつくった町工場の日報見える化アプリ」というキャッチフレーズで売り出され、当初の狙いだった中小規模の町工場だけではなく、大手企業からの引き合いもあるということです。

町工場DXには外部の支援を活用

スマートフォンとタブレットでスマファク!アプリを表示している様子の写真「スマファク!」アプリの画面イメージ

サンコー技研とサン・エンジニアリングの「スマファク!」は、大阪府の町工場DXのお手本ともいえます。

サンコー技研が相談を持ち込んだ「大阪府IoT推進ラボ」では、「IoT診断」と「IoTマッチング」を事業として実施しており、同社はこれを活用しました。
「IoT診断」では、中小企業診断士が、どの業務プロセスに、どのくらいの規模で導入するのが最適か、診断します。
「IoTマッチング」では、 社内IT人材がいない場合でも円滑に導入が進められるよう、様々な生産設備やネットワークを扱えるシステムインテグレイターを紹介しています。
参考:大阪府IoT推進ラボ事業「IoTリーンスタート!」

「地方版IoT推進ラボ」とは、地域における新たな価値創造に向けて、IoTプロジェクトを創出する取り組みを経済産業省とIPAが選定し、支援するものです。
地方版IoT推進ラボポータルでは全国106地域のIoTやDXの取り組み、セミナー・イベント情報等を紹介しています。

自社だけでは困難なIoT化やDXも、支援者の助言や提案を受けながら進めることができます。各地域の取り組み事例やセミナー・イベント等から、支援者や団体を探してみましょう。

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