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IoTとは? 今さら聞けないDX関連用語をわかりやすく解説

製造業

デジタル関連の資料やDXの事例でよく耳にする「IoT」という単語。みなさんはIoTがなんなのか説明できますか?
「IoT」とは何か。DXにおいて鍵となるIoTの活用方法はどのようなものか。具体例も交えてわかりやすく解説します。

IoTとは?

IoTとは?

IoTとは、「インターネット・オブ・シングス(Internet of Things)」の略で、「アイオーティー」と読みます。日本語では「モノのインターネット」と訳されることもあります。
IoTは、インターネットなどのネットワークにコンピュータやセンサー、カメラ、工作機械、家電などさまざまな「モノ」が接続され、データを収集したり相互に情報をやりとりしたりする概念のことです。

みなさんの周りにも、「IoT」の例はたくさんあります。
たとえば、スマートスピーカーやスマホで操作できる家電製品を持っていますか? 「IoT家電」という言い方をすることもありますね。IoT家電はネットワークに接続され、操作スイッチに触れなくてもネットワーク越しに操作できます。
ほかにも、外出先から家の様子が見られるペットモニター。ウェブサイトやアプリからリアルタイムに運行状況がわかるバス。高速道路のサービスエリアや商業施設で個室の利用状況が外からわかるトイレ。これらもIoTの具体例として挙げられます。

これまで、実際に触れなければ操作できなかったモノや、実際に見なければ状況がわからなかったモノが、離れた場所にあってもリアルタイムに操作したり状況を収集したりできるようになりました。
モノをネットワークにつなげ、リアルタイムに制御したりデータを取得したりすることを「IoT化する」というような言い方もします。

DXを推進しようとするとき、IoTの事例が多く見つかりますよね。
「DX」は 「データとデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデル、及び業務、組織、プロセス、企業文化・風土の変革を行う」ことです。この定義での手段である「データとデジタル技術」を活用する概念として、IoTがあります。

IoTのメリットとは?

IoTは、IoT家電のような消費者向けサービスだけでなく、産業でも活用されています。AIなど高度なデータ分析・シミュレーション技術の基盤としてのデータ収集のために、企業の規模や業界を問わず国内外でIoTが使われているのです。IoTのメリットとはなんでしょうか。

IoTのメリットとして、「生産性の向上と業務プロセスの最適化」と「顧客価値の向上」の2つのポイントが挙げられます。

IoTのメリットその1:生産性の向上と業務プロセスの最適化

IoTを活用することで、企業は生産物や設備に関わるデータを大量に取得したり、状況を把握したりできます。取得した大量のデータに対して、AI などのデータ分析技術を使って高度な分析・予測・シミュレーションを行います。その結果を生産設備やプロセスなどにフィードバックすることにより、生産性を向上したり、業務プロセスを最適化したりできるのです。

たとえば製造業では、過去の大量データから得られた知見に基づいて生産設備を監視し、異常発生を予測して機器を停止するなど、離れた場所から機器をリアルタイムに監視・制御・操作することも可能です。
たとえば農業では、生産環境の温度や湿度などのデータを取得し、設備の操作を自動化することもできるでしょう。

IoTのメリットその2:顧客価値の向上

製品に IoT センサーを搭載すると、製品の状態や顧客による利用状況・利用頻度などのデータを収集できます。得られたデータを分析することにより、保守サービスの品質向上や顧客ごとにカスタマイズしたサービスの提供が可能となり、顧客への提供価値を向上できます。

たとえば医療・ヘルスケア業界では、ウェアラブル端末などから取得した健康状態のデータをもとに個人の生活習慣の改善を勧めるサービスがあります。データから得た知見を顧客にフィードバックし、助言・注意を行う IoT の使い方が注目されています。

企業でのIoT活用の実例にはどんなものがある?

実際のIoT活用例として、ここでは製造業のIoT事例を2つ紹介します。

中小金型メーカーのつながる工場で生産性向上(株式会社ウチダ製作所)

中小金型メーカーのつながる工場で生産性向上

大手自動車メーカー向けにプレス加工部品の製造販売を行っているウチダ製作所。同社では、繁忙期には人材不足のため社内で金型を全て作り切れないため、金型製造を外部委託しています。

金型市場の全国シェア 1 位、2位を占める愛知県、静岡県では、汎用の金型は供給が追い付いています。しかし、高価な設計製造設備が必要な高難易度プレス金型は大手・中堅金型メーカーしか製造ができません。設計から製造、仕上げまで一貫で行える企業も限られていました。そのため、供給が追い付かず単価が上がっている状況でした。

このような課題に対応するため、同社は地域の金型メーカーと連携して企業連合をつくり、大手・中堅金型メーカーの市場であった高難易度プレス金型の製作を、「つながる工場」で行っています。

この企業連合が提供する「金型共同受注サービス」では、参加する金型メーカーの製造設備に IoTデバイスを取り付け、設備の稼働状況をクラウド上で把握します。各金型メーカーの仕事量を予測し、金型ユーザーからの注文を受けたときに、設備能力と仕事量に応じて最適な受注先金型メーカーを選択できます。
「つながる工場」は、自社だけでなく、他社も含めた生産性の向上に貢献します。

また、参加する金型メーカーは、保有する設備の稼働状況を提供することにより、受注の機会が増加します。参加する金型メーカーが増えて、「つながる工場」全体で保有する設備の台数や種類が増えれば増えるほど、空き設備を獲得でき生産量拡大のチャンスにつながります。
顧客である金型ユーザーにとっては、ワンストップで多種の金型を注文できるだけでなく、短納期化も期待できるのです。

計器のIoT 化で顧客の業務省力化に貢献(株式会社木幡計器製作所)

計器のIoT 化で顧客の業務省力化に貢献

圧力計業界や保全業務の将来に不安を抱き、新規事業の開拓に取り組んでいた木幡計器製作所。同社は2014 年、計器の遠隔監視が可能な「IoT 圧力計」を企業間共同プロジェクトで開発しました。
これは、従来の機械式圧力計に無線デバイスを搭載し、計測結果をクラウドに送信するものです。

同社が納入した計器は、顧客であるユーザーやメンテナンス事業者により使用されます。しかし、大手事業者であっても、計測結果を人が紙に書き写している状況でした。
また、ビルや工場などの設備機器の保全業務にかかる費用はコスト低減の対象にされやすく、省力化の動きがありました。特にビルメンテナンス業界は人材不足で、計器をチェックする作業員が十分に確保されていないこともあります。
そのような中、計器がIoT化されると、計器の稼働状態を遠隔から監視できるようになり、保全業務の省力化に貢献できます。

また、既設のアナログ式計器を IoT 化する「後付け IoT センサー・無線通信ユニット」も開発しました。これにより、顧客は既存の計器を新たな IoT 計器に取り換えることなく、IoT化できるのです。
これらは、顧客にとっての価値の向上につながります。

製造業のIoT活用事例をもっとくわしく知りたい方はこちらもご覧ください。
IPA「中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査報告書

IoTを使うときの注意点

IPAが2020年に公開した「情報セキュリティ10大脅威 2020」では、「組織」向け脅威の9位に「IoT 機器の不正利用」がランクインしています。
企業内部の重要なデータや、顧客・利用者のプライバシーに関わるデータを収集する場合には、IoT に求められるセキュリティとプライバシー保護の水準が高まることに注意しましょう。

急速に普及を続けている IoT 機器は、「情報家電」「オフィス機器」「自動車・輸送機器」「医療機器」「産業機器」等、さまざまな分野において今後も高成長が見込まれています。しかし、IoT 機器のメーカーはIoT 機器のリスク検討が不十分なまま製品を開発し、脆弱性を作り込んでしまうことがあります。
そのような IoT 機器は、インターネットを通じて脆弱性を悪用されてしまいます。脆弱性を悪用されると、IoT 機器がウイルスに感染させられたり、攻撃の踏み台にされたり、搭載されている機能を不正利用されたり等の被害にあうかもしれません。
また、「産業機器」や「自動車・輸送機器」等が対象の場合、誤動作や機能不全がもたらす被害が甚大になる場合があります。

一方、IoT 機器の利用者も、「IoT 機器を使っている」という認識や「IoT 機器はインターネットにつながっている」という意識が薄くなりがちです。セキュリティパッチの適用等の 脆弱性対策を行っていないケースでは、被害を拡大してしまいます。 

IoTを使う立場での対策について以下のようにまとめられています。確認してみましょう。

情報リテラシーの向上

  • 使用前に説明書を確認する

被害の予防

  • セキュリティパッチが公開されたら迅速に更新する(自動更新機能を有効にする)
  • 廃棄時は初期化する
  • 機器の管理画面や管理ポートに対する適切なアクセス制限をする
  • 不要なサービスを停止する(ポートを閉じる)

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2020」を基にDX SQUARE編集部にて作成。

IoTを活用してDX実現のスピードを上げよう

DXを実現するためにはデータとデジタル技術の活用が必要です。みなさんの会社や製品の中で、「IoT化」できるところはありますか?

IoTによって、データを大量に、またリアルタイムに取得することで、自社の生産性の向上や業務プロセスの最適化が目指せます。それだけでなく、ユーザーや他社にとっても価値のある製品やサービスを提供できます。

まずは「IoT」という言葉を理解し、みなさんの組織のDX実現に向けて、IoTの活用を積極的に検討していきましょう。

concept『 学んで、知って、実践する 』

DX SQUAREは、デジタルトランスフォーメーションに取り組むみなさんのためのポータルサイトです。みなさんの「学びたい!」「知りたい!」「実践したい!」のために、さまざまな情報を発信しています。

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