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エッジコンピューティングとは? 今さら聞けないDX関連用語をわかりやすく解説

製造業

エッジコンピューティングという言葉に出会う機会が増えていませんか。エッジコンピューティングは、IoT(Internet of Things)の分野で使われるもので、クラウドコンピューティングと対比して使われることが多いでしょう。最先端のテクノロジーのようなオーラを放っていますが実際はどうなのでしょうか。この記事では、IoTの基本を確認しながらエッジコンピューティングのメリットや事例を紹介します。

エッジコンピューティングとは?

エッジコンピューティングとは、IoT(Internet of Things)の世界で使われるシステム構成の形態、または概念のひとつです。ネットワークに多数の機器(モノ)がつながってデータのやり取りをしているとき、ネットワークを中心にして見ると、つながっている機器はネットワークの縁(へり)に位置します。このネットワークの縁(へり)=edgeの近くで計算処理やデータ保存などの分散処理を行うのがエッジコンピューティングです。

最近よく聞く「エッジコンピューティング」

最近、「エッジコンピューティング」や単に「エッジ」という言葉が良く使われるようになりました。これはクラウドコンピューティングが広く利用されるようになったことと関係しています。クラウドサービスは大変便利です。けれど、IoTデバイスから発生する全てのデータをクラウドで処理することに課題がある場合があります。

例えば、データのやり取りや処理に時間がかかる「レイテンシ(遅延)」の問題。産業機械の制御ではこの遅延が致命的なリスクとなることもあります。自動運転車が実用化する際にも同様でしょう。そこで、データをクラウドに送らず、デバイスの近くにあるコンピュータでデータ処理する「エッジコンピューティング」が注目されているのです。最近よく聞かれる技術ですが、実は最先端テクノロジーというわけではないのです。

IoTシステムの構成

基本的なIoTのシステム構成をおさらいしてみます。システムの末端、つまり現場に一番近いところに位置するのがIoTデバイスで、これはセンサーや各種機械を想定するのがわかりやすいでしょう。自動車の場合は搭載されたカメラやセンサー類から、エンジンやブレーキなど制御すべき部品までIoTデバイスだらけと言えます。(自動運転車については後述の事例のセクションで取り上げます)

また、コンピュータのようにデータ処理が可能な機器の場合もあります。これらのIoTデバイスがネットワークにつながっています。そしてネットワークを介して中央のサーバとつながります。昨今ではこの中央のサーバにはクラウドサービスが使われることも多いでしょう。

IoTのシステムでは末端に位置するIoTデバイスがクラウドなど中央のサーバと直接通信させることもありますが、通常は通信やデータを仲介する機器が間に入るケースの方が一般的です。中間で機器が介在するのは複数段階になることもあります。介在する機器の内でIoTデバイスと直接通信するものがIoTゲートウェイと呼ばれます。このIoTゲートウェイはプロトコル変換など単に通信を中継するだけの場合や、プロセッサ(CPU)やストレージを持っていて中継よりも複雑なデータ処理(例えば集計や分析、AIによる判断や推論など)をこなす様にすることも可能です。そして、一次処理をした結果を中央のサーバに送って、IoTシステムを構成する全体のデータ処理を行うようにできます。

ネットワークのエッジ

「エッジ」はどこ?

上述の様に、ネットワークの端っこでIoTデバイスがネットワークにつながるところエッジです。言い換えると、エッジは物理世界のIoTデバイスと、デジタル(サイバー)世界の境目になります。ある程度のデータ処理が可能な機器をこのエッジに近いところに置いて仕事の一部をさせるのがエッジコンピューティングです。IoTゲートウェイである程度のデータ処理を行うのが、エッジコンピューティングの典型例でしょう。

エッジコンピューティングのエッジがどこを・何を指すのかを記した規格も存在はするものの、概念的でもあるので多少のゆらぎが出るのはやむを得ません。エッジコンピューティングという言葉が注目されてよく使われるようになり、本当の縁(IoTデバイスの一番近く)だけでなくて、もう少し広い範囲で使われていることもあります。

図に記したIoTゲートウェイの位置がエッジの基本だろうと思いますが、通信事業者がエッジコンピューティングのサービスを提供するケースもあり、その場合はネットワークの縁よりも内側に位置する通信事業者の設備内になります。

また「エッジデバイス」と呼んでいる機器もあります。この場合は逆にネットワークの縁よりも外側にあるデバイス自身がデータ処理能力を持つようになってエッジコンピューティングの一部を担っていると見ることができます。「なるべく現場に近い所で」が基本となる考え方なので、これも自然な流れでしょう。

エッジコンピューティングに期待すること

エッジコンピューティングそのものは最先端の画期的な発明というものではありません。データ処理を1か所に集中させて行うのではなくて分散させる形の一案を示すものです。
ご存知のようにクラウドコンピューティングが広く普及して、「クラウドファースト」の言葉が表すように、可能ならばなんでもクラウドコンピューティングで実現しようとする流れがあります。けれど、クラウドコンピューティングにも課題はあります。エッジコンピューティングの発想は、クラウドコンピューティングの欠点をカバーしようとするものと言えます。つまり、エッジコンピューティングへの期待は、クラウドコンピューティングの課題の裏返しでもあります。

リアルタイム (低遅延) 処理・デバイス同士の協調動作

通信には時間が掛かります。IoTデバイスとクラウド環境のサーバとの通信では、通信だけで数十〜数百ミリ秒を要し、往復の通信時間に加えてサーバでのデータ処理時間が掛かります。この通信部分の遅延が待てないケースでは、近くにデータ処理サーバを置きたくなります。

例えば、自動運転や運転支援を実現するには危険回避の目的でセンサーの検知を直ちにフィードバックする必要があるでしょうし、多数のドローンの様に動くデバイス同士をリアルタイムで協調動作させたい場合も考えられるでしょう。100ミリ秒(0.1秒)では遅すぎるケースは日常的にあります。1ミリ秒(1000分の1秒)未満が必要なケースや、もっと低遅延を期待するケースもあります。

クラウドとの負荷分散

データを大量に集めて処理するのはサーバやネットワークにとって負担です。高性能なサーバと広帯域のネットワークの両方を用意するか、時間が掛かるのを諦めるかになります。例えばもし1万台のカメラからの画像データを中央のサーバに全て集めないといけないのであれば、処理が可能なサーバとネットワークに多額のコストを掛けて用意するしかありません。

けれど、中央のサーバに集めるのは集計した結果や、ある設定した条件に合ったデータだけで良いケースもあります。例えばIoTシステムとしては設置デバイスの前を通過する人の人数を知りたいのであれば、カメラが撮影した映像をそのまま全部サーバに送るのは無駄でしょう。

情報セキュリティ対策(無用なデータ共有の抑制)

IoTやクラウドサービス利用に限らず、不要なデータをため込んでしまうのは情報セキュリティの弱点になり得ます。例えば、人数をカウントするのに、個人特定できるかもしれない映像まで送るのはリスクになるかもしれません。目的達成には無用なデータまで送らなくてもいいように、前段階で加工することは、負荷分散という意味に加えて、情報セキュリティ対策にもなります。もちろん、デバイスやエッジで処理すればセキュリティ問題の心配が無いわけではなくて、データが通過する・残る箇所での対策は当然ながら必要になります。

エッジコンピューティング事例

自動運転

日本国内でもレベル4の自動運転(特定の走行環境条件を満たす限定された領域においてシステムが全て運転)のニュースが聞かれるようになり、注目や期待されている方も多いと思います。この自動運転技術でのエッジコンピューティング活用については期待含みですが、前のセクションで挙げた「リアルタイム (低遅延) 処理・デバイス同士の協調動作」の具体例になるでしょう。

自動運転を可能にするには、大まかに分類すると、認知(検知・認識)、判断、制御(操作)といった技術が必要になります。急な障害物に対して、認知→判断→制御を迅速に行うためには、データをクラウドサービスに送って判断していては間に合いません。自動車の内部で複数のIoTセンサーのデータを迅速に処理して制御することになります。この場合、車両内に搭載されたコンピュータがIoTゲートウェイになってエッジコンピューティングを担います。

また、道路など設備インフラや、近隣の走行車、歩行者のスマートデバイス(スマートフォン)などと連携することも考えられます。この場合は車両が直接通信をする車両外のサーバ(例えば携帯電話網の基地局などに設置)がエッジコンピューティングのサーバになります。

車両情報と交通の環境情報を扱う例

ヘルスケアIoT

ヘルスケアでのIoTの活用は、健康管理をより便利し、バイタルデータを病院の医師などと連携することで速やかな診療や遠隔医療が可能になるなどのメリットが考えられます。

多くの人のバイタルデータをクラウドサービスなどのサーバに集めてビッグデータとして分析することのメリットもありますが、測定されたデータがそっくりそのままサーバに集められて共有されると、個人情報の扱いに不安を与えることもあり得ます。測定されたデータは、まずはかかりつけの医師・病院で記録・処理されて個人の健康管理のために使われ、個人情報を含まない形で整理されたデータがクラウドなどのサーバと共有する形を取ることができます。前のセクションの「情報セキュリティ対策(無用なデータ共有の抑制)」に該当します。

製造品質のリアルタイムチェック

製造業ではIoT活用が進んでいます。FA(ファクトリーオートメーション)のセンサーや機器から取得したデータを工場の現場に設置したエッジサーバで処理し、不良品や設備異常の検知、摩耗など劣化の予測、状況のリアルタイムグラフ化などが可能になります。

まとめ

エッジコンピューティングというのはIoTシステムの構成の形態で、それ自体は最先端テクノロジーではないと書きました。しかし、エッジコンピューティングやその周辺で、新しい技術・製品・事例が次々と登場しつつあるのも事実です。まずはエッジコンピューティングとはどういうことかを理解していれば、それらの新しいニュースに触れるときの理解を助けることになるでしょう。

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