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DXのビジョンの描き方 キーワードは「未来妄想力」と「社会課題」

DXを進めるには、組織がひとつのビジョンを描き、共有することが大切です。ビジョンの策定のために必要な考え方のポイントは何でしょうか。
この記事では、「パターン・ランゲージ」と呼ばれる手法を使ったビジョンの描き方のポイントについて解説します。

DXのビジョンの合意についてはこちらの記事もご覧ください。
DXのビジョンとは?先進企業の5つの事例から学ぶDXビジョンの合意の進め方

変革への取り組み方を「考えるヒント」とは

現在は、社会や経済、環境等の変化の激しい時代です。この中で、組織や個人が輝き続けるためにはさまざまな局面で変革することが求められます。IPAでは、これまで変革を続けてきた組織や個人のリアルな成功体験・失敗体験、ヒントとなる気づきや工夫を「考えるヒント」としてまとめ、「トランスフォーメーションに対応するためのパターン・ランゲージ(略称トラパタ)」を公開しています。

パターン・ランゲージとは何か

パターン・ランゲージとは、成功している事例やその道の熟練者に繰り返し見られる 「パターン」を抽出し、抽象化を経て言語化して共有するための手法です。
これらのパターンを関係者の間の「共通言語」とすることで、課題解決の方向性を見える化し、共有することができます。
元々は建築家のAlexanderが建築・まちづくりの分野で始めた取り組みです。現在ではさまざまな分野で「パターン・ランゲージ」が生まれ、使われています。

IPAが公開している「トランスフォーメーションに対応するためのパターン・ランゲージ(トラパタ)」は、DXやスキル変革に関する何百という組織・個人の調査内容から参考になりそうなパターンの素として約200のエピソードを抽出し、それらを整理・洗練して24個の言葉にまとめたものです。

パターン・ランゲージの使い方

トラパタの使い方として、例えばパターンの記述をチーム内で読み合わせしたり、複数のパターンを組み合わせて見たりすることで、新たな課題解決のヒントにつなげられます。

トラパタを共通言語として使うことで、メンバーのプロジェクト実践を通してボトムアップでDXを推進することも、経営層に対する啓蒙ワークショップという形でトップダウンに適用することもできます。

変革のビジョンを描くためのキーワード

「トラパタ」には大きく3つのカテゴリがあります。そのうちの1つが「ビジョン」=「変革のあり方」です。DXを進める上でもっとも大切な「ビジョン」を描くヒントを、3つのキーワード(パターン)をもとに紹介します。

未来妄想力

「10 年スパンで先を見据えてみると、危機もチャンスにつなげることができる。」

いまどんな状況か
めまぐるしい変化が起こっている。

その状況で起こりうる問題は?
VUCA と呼ばれる不確実な時代において、ものすごいスピードで自然・社会環境や産業構造が変化しています。しかし変化に振り回されるだけでは、その組織は疲弊し、いずれ衰退してしまいます。

問題解決のために必要なこと
変化に都度対応することも必要です。しかし予測不能な未来に向け、軸のぶれない進化を続けていくために、10 年 20 年といった長期的な視点でものごとを考えていくことが必要です。

アクション

  • 10年20年先に、自分や自分たちがどうありたいか考え、自分たちの軸は何なのかまとめてみましょう。
  • 更にこの先はどのように変わっていくのか敏感でいることで、長期的な変化も想像しやすくなります。
  • SDGsなどの視点を取り入れて考えてみると、視点が広がり、取り組みに対する到達度を測りやすくなります。

その結果どうなる?

  • 軸がぶれないので、どんな変化にも動揺しなくなります。
  • 危機的な状況をチャンスに変える思考に転換できるようになります。
  • どんな変化にも対応できる持続可能な組織になっていきます。


社会課題は未来の芽

「日ごろ関係ないと思われる社会課題にこそ、ヒントがある。」

いまどんな状況か
自分たちに何ができるかを考えている。

その状況で起こりうる問題は?
利益が出ることを基準に考え、そればかりを追い求めると、いずれ社会から必要とされなくなってしまうかもしれません。

問題解決のために必要なこと
日ごろから気になっている身近な問題や、事業と関係のある社会課題はもちろんのこと、そうでない社会課題にも目を向けましょう。それらと自分たちの事業とのつながりや意義を意識して今後の取り組みを考えていきます。 

アクション

  • まずは、身近な困りごとを解決できないかを考えてみましょう。
  • SDGs などの視点も取り入れ、様々な社会・環境・経済の課題と自分たちの事業との結びつきを考えてみましょう。
  • 自分たちに直接関係ないように見える社会課題にも目を向けて、自分たちの事業とつながりがないかを考えてみましょう。

その結果どうなる?

  • 身近な問題に、新たなビジネスのチャンスが潜んでいることに気がつくようになります。
  • 社会課題との関係に気づくことで、いっきに視野が広がり、新たな取り組みができるようになります。
  • CSR で高い信頼と信用を得ることにつながり、組織としてのブランド力もあがっていきます。


未来への羅針盤

「自分たちの未来ストーリーを描いてみると、そこにはビジョンがある。」

いまどんな状況か
変革に向けて動き出そうとしている。 

その状況で起こりうる問題は?
決めたゴールに向かって動いているつもりでも、その最中では目指すべき方向性を見失いがちで、行動がバラバラになってしまうことがあります。

問題解決のために必要なこと
自分たちの属する企業や組織の「こうありたい」と想う未来像(ビジョン)を理解・共有し、それが自分の業務の起点になると捉え、常にビジョンとのつながりを意識して行動していきましょう。

アクション

  • 様々な場面で自分たちのありたい姿、それに向けた取り組みの必要性を自身の言葉で語れるようにしましょう。
  • 自分の言葉で語れるようになった「こうありたい」という姿を、チームや組織内で共有し、話し合う場をつくりましょう。
  • 自身の業務を、週に 1 回・月に 1 回等、度々振り返る機会を持つようにし、今取り組んでいることが、未来像へ向かっているか、ズレていないか等、立ち戻って確認しましょう。

その結果どうなる?

  • 短絡的な視点に陥らず、未来へ向かって地に足の着いた行動につながっていきます。
  • 全員が同じゴールに向かって、自律的に判断・行動できるようになります。
  • 組織の至るところで自律的なイノベーションが起き、組織全体で創発的な動きができるようになります。

ビジョンを描いてDXを進めよう

DXの推進においては、まずビジョンを描くことが必要です。

  • 未来妄想力
  • 社会課題は未来の芽
  • 未来への羅針盤

この3つのキーワード(パターン)は、DXやスキル変革に関する何百という組織・個人の調査内容から参考となるエピソードを抽出し、それらを整理・洗練した中から生まれたものです。不確実な時代を生き抜くためのヒントが詰まっています。

これらの言葉と自分たちの体験を結び付けて、ディスカッションをしてみましょう。また、そこから得られた気付きを整理してみましょう。組織をまたいで状況や課題を共有し、ビジョンを描くためのヒントになるはずです。

「トランスフォーメーションに対応するためのパターン・ランゲージ(略称トラパタ)」はIPAのWebサイトにて公開しています。ぜひご活用ください。
トランスフォーメーションに対応するためのパターン・ランゲージ(略称トラパタ)

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