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DX推進パスポートとは? IPA2年目職員がデジタルバッジをもらってみた

人材育成

DXを進めている多くの企業で課題となっているのが、「人材」。
最近では、ローコード・ノーコードツールや自分たちでカスタマイズできるクラウドサービスの利用も増えています。そのため、企業の現場ではデジタルを「使う」だけでなく、デジタルを「作る」場面も増えてきたのではないでしょうか。
ひとえに「人材」といっても、デジタルを「使う」と「作る」を行ったり来たりする知識をもつ人材が必要になってきているのです。この記事では、企業や組織の現場でDX推進を目指す人の、スキルアップの指標となる、「DX推進パスポート」についてご紹介します。
今回はDX推進人材を目指すIPA新卒2年目(2023年度現在)の吉川君(仮名)が実際にDX推進パスポートを取得しました。彼の体験も含めながら、DX推進パスポートとは何か、取得する方法、メリット等を解説します。

DX推進パスポートとは?

DX推進パスポートとは、DXを推進するプロフェッショナル人材となるために必要な基本的スキルを有することを証明するデジタルバッジです。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)と一般社団法人データサイエンティスト協会(DS協会)、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)の3つの団体からなるデジタルリテラシー協議会が、DX推進パスポートの管理、発行、運営をしています。

デジタルリテラシー協議会は、すべてのビジネスパーソンが身につけるべきデジタルリテラシーの範囲として

  • IT・ソフトウェア領域
  • 数理・データサイエンス領域
  • AI・ディープラーニング領域

の3つの領域が必要だと定義。そして、学習すべき範囲として、3つの試験を推奨しています。
DX推進パスポートは、それらの3つの試験すべてに合格することを推奨するためにつくられました。

このパスポートは、DXを進める職場において、チームの一員として作業を担当する人が想定されています。つまり、システム部門に所属する一部の人たちだけでなく、現場や事業部門の担当者が対象です。現場のみなさんが、DXを推進していくのに必要な基本的スキルをもっている、ということを証明してくれるのが、このDX推進パスポートなのです。

3つの試験の合格数に応じてもらえるデジタルバッジ

DX推進パスポートには、「ITパスポート試験」、「G検定」、「データサイエンティスト検定リテラシーレベル」の3試験の合格数に応じて、3種類のバッジがあります。
3試験のうち1種類の合格者には「DX推進パスポート1」、2種類に合格すると「DX推進パスポート2」、3つすべてに合格すると「DX推進パスポート3」が発行されます。

DX推進パスポートは、オープンバッジとして世界標準の技術標準規格に沿って発行されるデジタル証明です。物ではなくデータで授与され、自分専用のオープンバッジウォレットで管理することができます。
そのため、パスポートの取得者はデジタルバッジをSNSやメールで共有でき、自身のスキルをオープンに示せます。

また、企業は、DX推進パスポートを取得した社員を見える化して、社内のデジタルスキルの保有状況を把握することができます。

3つの試験ってどんなもの

DX推進パスポートの対象になっている3つの試験について、簡単にご紹介します。

ITパスポート試験

ITを利活用するすべての社会人・これから社会人となる学生が備えておくべき、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験です。
経済産業省所管の独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施。試験は全国の試験会場(CBT)で通年開催されています。DXの取り組みが進む近年では、非IT関連企業を中心にITパスポート試験の活用が急増しています。

ITパスポート試験(IPAウェブサイト)

G検定(ジェネラリスト検定)

AI・ディープラーニングの活⽤リテラシーが習得できる試験です。ディープラーニングやAIに関する様々な技術的な⼿法やビジネス活⽤のための基礎知識の証明になります。
一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施。試験は自宅からオンラインで受けられ、年6回(1月、3月、5月、7月、9月、11月)開催されています。

G検定(日本ディープラーニング協会ウェブサイト)

データサイエンティスト検定リテラシーレベル

アシスタント・データサイエンティスト(見習いレベル:★)と数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムが公開している数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)におけるモデルカリキュラムを総合し、実務能力と知識を有することを証明する試験です。
一般社団法人データサイエンティスト協会が実施。試験は全国の試験会場(CBT)で年に2回開催されています。

データサイエンティスト検定リテラシーレベル(データサイエンティスト協会ウェブサイト)

DX推進パスポートを取得する方法

DX推進パスポートは、デジタルリテラシー協議会のウェブサイトから申請し、取得することができます。
今回は、IPA職員の吉川君(仮名)が実際にDX推進パスポートを取得してみました。
IPA新卒2年目、文系学部出身の事務職員の吉川君。
これまでシステム開発の経験はもちろんありません。しかし、現場でデジタルを「作る」ことに挑戦中!
現在は事業部門内で、クラウドのローコードツールやRPAツールを使い、部門のみんなが使えるツールを作るなど、業務の効率化を目指しています。

吉川君は、自己研鑽のため「ITパスポート試験」と「G検定」の2種類の試験に挑み、合格済み。今回は、「DX推進パスポート2」をもらうため、受付開始直後の2024年2月9日に申請してもらいました。

吉川君に質問!

―― 「どうして試験を受けようと思ったんですか? また学習してみてどうでしたか?」


吉川:入構1年目に、IPAに就職したなら、まずは基礎的なIT知識を身に付けようと思い「ITパスポート試験」を受験しました。ITの知識はほぼゼロだったので、たくさんの横文字に苦労しました(笑)

2年目になった頃、生成AIがトレンドになり、AIについて興味を持ちました。

調べていくうちに、G検定という試験があることを知り、迷わず申し込みました。

試験時間に対して問題数がかなり多いので、反射的に回答できるよう、広く深く知識を身に付ける必要があり、大変でしたが、AIというだけでワクワクしながら学習ができました。



申請しよう

DX推進パスポートは、デジタルリテラシー協議会のウェブサイトに設置された「発行依頼」のフォームから申請することができます。なお、DX推進パスポートの取得に、費用はかかりません。

「発行依頼」フォームからは、「基本情報」として氏名や生年月日、また各試験の「合格者情報」として、合格証の番号などを入力します。手元に合格証を準備しておきましょう。
アンケートも含めて5分程度で回答できます。

 アンケートには、たとえば現在の業務や役割についてや、自分のキャリアや学びについて、また、資格取得についてなど、全部で14の質問がありました。(2024年2月現在)

フォームを埋めて「送信」すれば、発行依頼完了。あとは発行の連絡があるのを待つだけです。

デジタルバッジ発行

申請から1か月程度で、DX推進パスポートが発行されます。
2024年2月9日に申し込んだ吉川君のデジタルバッジは、3月8日に発行の連絡がありました。

発行されたデジタルバッジ。これをスマートフォンのオープンバッジウォレットに入れて、管理することができます。また、メールやSNSで共有もできます。

オープンバッジウォレットでいつでもバッジを確認。メール署名などで共有もできる。

DX推進パスポート取得のメリット

ここまで、DX推進パスポートとは何か、また、取得方法について説明してきました。最後に、DX推進パスポートを取得するメリットについて、いくつか紹介します。

学び・スキルアップの足がかりになる

世の中には、ITやデジタルの分野だけでも数多くの試験や検定が存在します。
ビジネスの現場で使えるデジタルスキルを身につけたい、スキルアップしたい、という人にとって、DX推進パスポートはその足がかりになるでしょう。たとえば、まずは国家試験である「ITパスポート試験」を受けてみる。その次に何を学ぼうかと考えるとき、「G検定」や「データサイエンティスト検定リテラシーレベル」にチャレンジするきっかけになります。DX推進パスポート1から3まで順番にとっていくことで、モチベーションを維持して学び続けられるのではないでしょうか。

幅広い分野の基礎的・総合的な知識が身につき、デジタルを使う/作るのに役立つ

DX推進パスポートは、デジタル・ITの基礎的知識に加え、データサイエンスやAIの分野も範囲になっています。そのため、デジタルを「使う」と「作る」を行ったり来たりするような、現場のDX推進人材にとって必要な知識が身につくでしょう。
たとえば、システム部門所属ではない現場の担当者が、システムエンジニアと共にシステムの内製化を進めたり、現場へのシステムの展開時に自ら説明ができるようになるなど、DX推進人材としての活躍の場が広がります。

がんばりが認められて自信がつく

デジタルバッジとして発行されることで、自分の努力が結果として目に見えるようになります。
今回DX推進パスポート2を取得したIPAの吉川君は、これをきっかけに、「データサイエンティスト検定リテラシーレベル」も受験して、DX推進パスポート3の取得を目指しています。
現場でDXを推進する立場として、次に学ぶべき分野の指針として使えるだけでなく、会社や上司、先輩たちにもそのがんばりが認められます。また、後輩たちのお手本としても活躍してくれるでしょう。
それは、若手職員である彼の自信につながるはずです。

吉川君に質問!

―― 「DX推進パスポートを取得してみてどうでした?」


吉川:すでにITパスポート試験とG検定に合格していたので、DX推進パスポートの情報を知り、すぐに申し込みました。自分の学習の成果が一目でわかるので、学習してよかったなあと改めて感じました。
履歴書にオープンバッジウォレットを載せる時代はもうすぐ目の前かもしれません。


人材市場で自身のスキルを客観的にアピールできる

自信がつくだけではありません。デジタルバッジとして発行されるため、人材市場にオープンに示すことができます。

「DX」は、日本全国のさまざまな規模、さまざまな業種の企業で取り組まれています。そのため、DX推進パスポートは、会社や業界の枠を超えて、自身のデジタルスキルや市場価値を客観的に証明することができます。

企業・組織の人材戦略に活用できる

企業や組織で人材育成を担当している立場の人にとっても、メリットがあります。
適切な人材育成計画や人材配置のためには、スキルを持った人材がどこにどのくらいいるのか把握することは不可欠です。自社でDX推進パスポートの取得を推奨すれば、人材のデジタルスキルの保有状況が可視化されるでしょう。
DX推進パスポートを組織的に活用することで、デジタル人材についての戦略立案が容易になります。

DX推進パスポートでスキルアップ・人材育成を加速しよう

DX推進で活躍・スキルアップしたいみなさん、3つの試験にチャレンジして、DX推進パスポートの取得を目指してみませんか。DX推進パスポートは、DX推進を目指すすべての人にとって、活躍の場に一歩踏み出すための『パスポート』です。

また、DXを進める企業や組織も、人材の背中を押してあげることで、DX推進を加速させることができるでしょう。

参考:デジタルリテラシー協議会「DX推進パスポート」

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