「デジタル化」と「DX」は何が異なる? それぞれの違いや目的を解説
DXとは世の中に徐々に浸透してきた「DX」という言葉ですが、「デジタル」の印象が先行してしまい、「デジタル化」と混同されているケースも少なくありません。実は、DXの目的とデジタル化の目的は異なるのです。
今回は、「デジタル化」と「DX」の違いは何か、それぞれが果たす役割や、DX実現への第一歩となるデジタル化の取り組み例についてもくわしく解説します。
なお、「DXとは何か」については、以下の記事でも解説しています。DXの定義についてくわしく知りたい方は参考にしてみてください。
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デジタル化とDXは目的が異なる
デジタル化とDXの概念は同じようなものとして捉えられがちですが、両者には明確な違いがあります。混同されやすい「デジタル化」と「DX」の違いについて、例を出しながらわかりやすく解説しましょう。
業務効率化を目的とした「デジタル化」
デジタル化は、一言で表すと「アナログからデジタルへ置き換えること」といえます。たとえば、PCやインターネットが登場する以前、ビジネスにおける情報伝達手段は電話やFAX、書類などが一般的でしたが、現在ではメールやチャット、ビデオ会議システムなどへ多様化しています。これらはコミュニケーション手段のデジタル化ともいえ、時間や場所にとらわれることのないコミュニケーションが可能になりました。
デジタル化の目的としては、ITシステムやツールの活用によって業務の負荷を軽減することや、効率性を高め生産性をアップさせることが挙げられます。
企業の競争力向上を目的とした「DX」
DXとは、データとデジタル技術を使ってビジネスモデルそのものを変革したり生み出したりすることです。
DXをよりわかりやすく紹介するために、自動車の歴史に例えてみましょう。自動車が登場する以前は、人々の移動手段として馬車が多く用いられていました。しかし19世紀後半、より快適に速く移動することを目的に世界初のガソリンエンジンを搭載した自動車が開発されると、またたく間に全世界へ普及。車の動力が「馬」から「エンジン」へ革新されたことにより、短時間で長い距離を移動できるようになりました。また自動車が大衆に広まると、人々のライフスタイルも多様化しました。そして現在、自動車は私たちの生活になくてはならない存在であり、人やモノを運ぶためのものとして社会に広く浸透しています。また、自動車の走る道路が整備され、その周辺には多くのお店や観光スポット、住居などが点在するようになりました。
自動車の歴史とDXを重ね合わせたとき、エンジンという動力が開発されたことが「デジタル化」であり、自動車が広く普及し人々の移動手段や物流基盤が変わり、人々に新たな価値が提供される状態が「DX」と考えることができるのです。
DXの目的としては、ビジネスモデルそのものを変革したり生み出したりして人々に新たな価値を提供することで、競争優位性を確立し、企業の競争力をアップすることが挙げられます。
デジタイゼーションとデジタライゼーション
DXを実現するための段階として、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」があります。これらはどのような意味の言葉なのか、DXとの関連性についてもくわしく解説します。
デジタイゼーションとは
デジタイゼーションとは、「アナログ・物理的なデータをデジタル化すること」です。
たとえば、請求書や売上伝票などを紙で管理している場合、それらの情報をシステム上に入力し、デジタルデータとして扱える状態にすることがデジタイゼーションにあたります。
デジタライゼーションとは
デジタライゼーションとは、「業務プロセスをデジタル化すること」です。
書類に記入されていた情報を単にデジタル化しても、業務プロセスを変えない限りは効率化に繋がりません。そのため、請求データや売上データを会計システム上で管理したり、日別や月別のデータとして出力できる仕組みを構築したりすることなどがデジタライゼーションにあたります。
なお、デジタライゼーションを実現するための前提としてデジタイゼーションは不可欠なプロセスといえます。
DXの実現に向けてデジタイゼーション・デジタライゼーションは不可欠なステップ
デジタイゼーションおよびデジタライゼーションの先にあるのが、DXです。デジタイゼーション・デジタライゼーションはデジタル化の一環であり、業務効率化や生産性の向上といった課題をクリアしたあと、新たな価値を創出することがDXといえます。
そのため、デジタライゼーションの前提にデジタイゼーションがあるように、DXの前提にもデジタライゼーションとデジタイゼーションが存在しています。
DXに向けて取り組むべきデジタル化の一例
DXとデジタル化は異なる概念であるものの、DXを実現するうえでデジタル化は欠かせないステップでもあります。では、DXへの取り組みの第一歩として有効なデジタル化にはどのような事例があるのでしょうか。4つの例を挙げながらくわしく解説します。
ワークフローシステムの導入
社内における申請・承認の業務を効率化するために有効なのが、電子承認・決裁の仕組みであるワークフローシステムです。
ワークフローシステムの導入には、業務の棚卸・標準化が求められます。たとえば、申請書類に記入すべき項目や承認ルート、申請の種類などを洗い出し整理する必要があります。ワークフローシステムの導入そのものがスピーディーな申請と承認を実現していることはもちろんですが、導入過程において非効率的な業務や属人化している業務の見直しが図られ、多くの業務をデジタル化に移行できる効果も見込めます。
電子契約の導入
ペーパーレスや脱ハンコの流れに応じて、従来の書面による契約から電子契約へ移行する企業が増加しています。電子契約によって書面によるやり取りが不要になり、契約のために先方へ訪問したり、書面を郵送したりといった手間がなくなります。その結果、スピード感のある取引が実現できるほか、契約プロセスの効率化にも貢献できるでしょう。
DXに積極的な企業との取引や契約を進めるためにも、電子契約への切り替えは有効であるといえます。
テレワークへの移行
2020年からのコロナ禍においては、テレワークを実施するために業務や働き方を見直した企業も多かったのではないでしょうか。
また、DXの実現にあたっては、デジタルに強い人材が不可欠といえます。しかし、社内にデジタル人材が不足しており、思うようにデジタル化やDXが進まない企業も少なくありません。そこで、優秀な人材を採用するためには、テレワークをはじめとした働きやすい環境を整備することが重要です。テレワークへの移行はコミュニケーション方法の最適化や業務効率化だけでなく、優秀な人材の確保にもつながります。
ECサイトの開設
ECサイトの開設は代表的なデジタル化の一例です。従来の実店舗での販売にとどまらず、ECサイトの開設によって販路が拡大し、全国のユーザーへ商品を販売できるようになります。
顧客が過去に購入した履歴データの活用によりECサイト上でおすすめ商品などを自動的に提案できるようになれば、さらなる販売機会向上に繋がる可能性もあります。
DXの実現に向けてデジタル化を着実に進めていこう
デジタル化とは、現在の業務を自動化・システム化し、業務効率化や生産性の向上を目的としています。これに対し、DXはデジタル技術でビジネスモデルそのものを変革して新たな価値を生み出し、企業の競争力を向上することを目的としています。
デジタル化とDXは異なる概念といえますが、デジタル化はDXの実現に向けての第一歩であり、欠かせないプロセスであることも事実です。今回紹介したデジタル化の一例も参考にしながら、自社で取り組める内容を着実に実行しDXを実現していきましょう。
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