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DX推進に必要なスキルを知ろう デジタルスキル標準とは?

DXを進める中で、多くの企業の課題となっている「人材」。DX推進にはどのようなスキルを持った人材が必要なのか、みなさんは説明できますか?
経済産業省とIPAは、2022年12月に、DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルを定義した「デジタルスキル標準(DSS)」を策定しました。また、2023年8月には、生成AI時代のDX推進を踏まえ、「デジタルスキル標準」に生成AIの記載を追加する改訂を行っています。
本記事では、「デジタルスキル標準」の内容を用いながら、DX推進に必要なスキルや人材について解説していきます。

デジタルスキル標準とは

デジタルスキル標準はDXを推進する人材の役割や習得するべきスキルを定義しているものです。デジタル技術を活用して競争力を向上させる企業などに所属する人材を想定しています。

DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つの標準で構成されています。
「DXリテラシー標準」は、すべてのビジネスパーソンに向けた指針とそれに応じた学習項目例を定義。一方、「DX推進スキル標準」は、DXを推進する人材の役割(ロール)及び必要なスキルを定義しています。

すべてのビジネスパーソンへ DXリテラシー標準


環境変化やDXが推進される世の中で、ビジネスパーソン一人ひとりが、よりよい職業生活を送るためには、従来の「社会人の常識」とは異なるものも含む知識やスキルの学びの指針が必要です。「DXリテラシー標準」は、ビジネスパーソン一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることを目的としています。

個人としてDXリテラシー標準に沿って学ぶことで、世の中で起きているDXや最新の技術へのアンテナを広げることができます。アンテナを広げることで、 DXリテラシー標準の内容を身につけることにとどまらず、日々生まれている新たな関連項目・キーワードにも興味を向けることができるようになるでしょう。

一方、企業や団体では、DXに関するリテラシーを身につけ、DXへのアンテナを広げた人材が増えることで、DXを加速することができます。

DXリテラシー標準の構成

DXリテラシー標準は以下の4つの項目から構成されています。

  • 【マインド・スタンス】新たな価値を生み出す基礎としてのマインド・スタンス
    社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動を定義
  • 【Why】DXの背景
    DXの重要性を理解するために必要な、社会、顧客・ユーザー、競争環境の変化に関する知識を定義
  • 【What】DXで活用されるデータ・技術
    ビジネスの場で活用されているデータやデジタル技術に関する知識を定義
  • 【How】データ・技術の利活用
    ビジネスの場でデータやデジタル技術を利用する方法や、活用事例、留意点に関する知識を定義

DXリテラシー標準の活用方法

では、この標準をどのように活用していけばいいのでしょうか。
組織・企業、個人、教育コンテンツ提供事業者をDXリテラシー標準の主要なユーザーと想定し、それぞれの立場に合わせた活用方法やその具体例を示していきます。

組織・企業の活用方法

社員に対して、DXに関するリテラシーを身につけさせる際に、その育成体系を検討するうえでの指針として活用します。
また、自社としてのDXの方向性を検討する材料として活用し、方向性を踏まえてDXに関するリテラシーを身につける必要性を経営層や社員に示すこともできます。

個人の活用方法

DXに関する記事、書籍、学習コンテンツ等が巷に多く存在する中で、自ら学ぶ内容を選択し、学びを体系的に設計するための指針として活用します。

教育コンテンツ提供事業者の活用方法

DXに関するリテラシーについての教育コンテンツを整備し提供するうえで、どのような内容を広くビジネスパーソンに伝えるべきか検討する指針として活用します。

DXを推進する人材へ DX推進スキル標準

日本企業がDXを推進する人材を十分に確保できていない背景には、自社のDXの方向性を描くことや、自社にとって必要な人材を把握することの難しさに課題があると考えられます。

各社がDXを通じて何をしたいのかというビジョン、その推進に向けた戦略を描いた上で、実現に向けてどのような人材を確保・育成することが必要になるか、適切に設定することが重要です。「DX推進スキル標準」はそのための参考となるでしょう。
しかし、スキル標準から戦略を描こうとすることや、スキルを闇雲に身につければDXが進むというものではないことには留意が必要です。

DX推進スキル標準では、DXを推進する人材の役割や習得すべき知識・スキルを示し、それらを育成の仕組みに結び付けることで、リスキリングの促進、実践的な学びの場の創出、能力・スキルの見える化を実現します。

DX推進スキル標準の構成

DX推進スキル標準は、5つの人材類型からなっています。さらに、その下位区分であるロール、全ての人材類型・ロールに共通の共通スキルリストから成り立ちます。

DX推進スキル標準の構成(IPA)より

  • ビジネスアーキテクト
    DXの取り組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材
  • デザイナー
    ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材
  • データサイエンティスト
    DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材
  • ソフトウェアエンジニア
    DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材
  • サイバーセキュリティ
    業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材

DX推進スキル標準の活用方法

組織・企業、個人、教育コンテンツ提供事業者をDX推進スキル標準の主要なユーザーと想定し、それぞれの立場に合わせた活用方法やその具体例を示していきます。

組織・企業の活用方法

社会の変化を踏まえ、自社に必要なDXを推進するための戦略を策定し、スキル標準を参考に、自社のDX推進に必要な人材を確保するための取り組みを実行します。

個人の活用方法

所属する組織・企業のDXの方向性や個人のキャリアを踏まえて、必要な知識やスキルを認識するための指針とします。
また、自身の業務やキャリアの中での実践イメージを持ちながら、それらに関する研修コンテンツを受講します。

教育コンテンツ提供事業者の活用方法

スキル習得のために必要な学習項目を示し、組織・企業や個人に向け、それらの内容の説明や、アウトプット・実践のための機会提供を行います。

まとめ

企業がDXを推進するためには、全社的なDXの方向性を基に人材確保・育成の取り組みを実行し、それを通して実現できたことを踏まえ方向性を見直していくような循環が必要です。その中で、デジタルスキル標準は人材確保・育成の取り組みの実行を後押しします。

なお、DX推進スキル標準に示されているDX推進に必要な役割は、企業がこれら全てを最初から揃えることは必須ではありません。事業規模やDXの推進度合に応じて一部の役割から揃えていくことが想定されます。
DX推進のための人材確保・育成に向けて一歩前進していきましょう。

関連リンク

デジタルスキル標準(IPA)

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