デジタルツインとは? 今さら聞けないDX関連用語をわかりやすく解説
製造業などで最近話題の「デジタルツイン」という単語。みなさんは説明できますか?
「デジタルツイン」とは何か、デジタルツインの活用方法はどのようなものか、具体例も交えてわかりやすく解説します。
デジタルツインとは?
デジタルツイン(Digital Twin)とは、直訳すると「デジタルの双子」という意味です。
現実空間のモノやヒト、プロセスなどをサイバー空間に双子のように再現したものや、それを活用したシステムのことをいいます。
デジタルツインはさまざまな産業で活用されています。たとえば、次のような事例があります。
- 建設現場で、ビルのリアルタイムな建設状況を3Dモデル上に可視化する。
- 生産現場で、作業員の作業状況を分析して作業遅延を予測・予防する。
- 業務システムの記録を収集し、業務プロセスをグラフやフローチャートとして可視化・分析する。
- 都市全体の3Dモデルにリアルタイムな状況を反映する。
これらの事例からもわかるように、デジタルツインの対象はモノやヒト、プロセスや都市など多岐にわたります。
現実空間の対象をサイバー空間で再現する試み自体は、以前から行われてきました。
しかし、デジタルツインの特徴は、現実空間のデータをリアルタイムにサイバー空間に反映する点です。
その結果、サイバー空間のデジタルツインをリアルタイムに更新し、従来のものより現実に近いシミュレーションが可能になりました。サイバー空間上で行う分析やシミュレーションの結果は現実空間へフィードバックされ、機器の自動制御や、利用者が洞察を得ることに役立ちます。
デジタルツインのメリットとは?
デジタルツインを活用するメリットとして、主に「開発の高速化」と「業務プロセスの効率化・生産性向上」、「新規サービスの創出」が挙げられます。
メリット1:開発の高速化
研究開発においてデジタルツインを用いることで、試作品作成などのコストを抑えられます。また、短時間でテストやシミュレーションを行うことができるようになります。その結果、製品の品質を向上させるとともに、研究開発を高速化できます。
メリット2:業務プロセスの効率化・生産性向上
デジタルツインを用いて、業務プロセスを可視化・分析することで、非効率なプロセスを特定することができます。非効率なプロセスを改善すれば、プロセス全体の効率化が可能です。
また、デジタルツインによってリアルタイムなデータを分析することで、異常が起きる前に対処できます。その結果、プロセスの停止時間を短縮でき、生産性が向上します。
メリット3:新規サービスの創出
デジタルツインを用いた新たなサービスが生まれています。
たとえば、デジタルツイン上で分析を行い、機器の適切なメンテナンス時期を予測して保守を行うサービスがあります。また、生活習慣病を改善するため、患者個人の代謝に関するデータを収集・分析し、個別の生活指導を行うサービスも生まれています。
デジタルツインを用いた分析・シミュレーションによって予測的な洞察を得ることで、付加価値の高いサービスを創出することが可能になります。
企業でのデジタルツイン活用の実例にはどんなものがある?
倉庫のデジタルツイン
米国のアマゾン・ロボティクスは、倉庫のデジタルツインを活用しています。
アマゾンの倉庫内では、自走式のロボットが商品の載ったパレットを持ち上げ、配送作業員のもとへと運びます。倉庫のデジタルツインを作成することで、倉庫の建設やレイアウトの変更に先立って、ロボットのシミュレーションを行えます。これにより、倉庫設計を最適化するとともに、倉庫の稼働停止時間を減らします。
また、この事例では、荷物の自動仕分けに用いる画像認識AIの学習用データに、サイバー空間上で生成した写実的な画像データを含めることで、AIの学習時間の短縮やAIモデルの精度向上も実現しています。
航空会社の地上業務のデジタルツイン
ドイツの地域航空会社ルフトハンザ・シティラインは、利用客の搭乗や荷物の積み込みなどの地上業務プロセスに関するデータを収集し、デジタルツインで可視化しています。
可視化した業務プロセスの中から、離陸時間を遅らせる原因となっていた非効率なプロセスを特定し、改善活動を継続的に実施しました。この取り組みによって、離陸の遅延率が減少しました。また、当初より搭乗締め切り時刻を遅らせることが可能になり、顧客満足度が向上したといいます。
デジタルツインを使うときの注意点は?
デジタルツインは、IoTなどのデータの利活用技術を組み合わせて作成され、多くの構成要素からなる複雑なシステムです。導入時には、大規模なシステムを一気に作り上げるのではなく、最低限の利益を上げることができるよう、スモールスタートの取り組みが効果的です。
また、デジタルツインを活用する場合、セキュリティはいっそう重要になります。
もし、攻撃を受けて改ざんされたデータがデジタルツインに反映されてしまったら、分析やシミュレーションの結果がゆがめられ、誤ったビジネス上の判断を下してしまう危険性があります。さらに、デジタルツインには個人情報や機密情報などのデータが集約される場合も多く、情報流出が起こらないよう注意が必要です。
デジタルツインに活用される技術とは?
デジタルツインは、データの収集、データの分析、現実空間へのフィードバックを行うためにさまざまな技術を組み合わせ、実現されます。
現実空間からデータを収集する際には、IoTが重要な役割を果たします。
収集したデータをサイバー空間で分析・シミュレーションする際には、AIが活用され始めています。
データや分析結果を可視化する際には、3D技術やAR・VRのような技術が用いられることもあります。
デジタルツインの活用を検討していこう
IPAの「DX白書2023」では、「デジタルツインを構築・活用していない」との回答が米国企業では約15%だったのに対し、日本企業では58%と、活用状況に大きな差があります。
今後5年間で世界でのデジタルツインの市場規模は現在の10倍以上に成長すると予測されているものもあります。
デジタルツインは、さまざまな業界や業務で幅広く活用できます。みなさんも今後の活用検討に向けて、自社での利活用シーンを想像してみてはいかがでしょうか。
デジタルツインについてもっとくわしく知りたい方は、IPAのアナリストによる調査・分析レポートもご覧ください。
全体最適へ向かうデジタルツイン ~拡大するデータ収集・再現対象~(IPAウェブサイト)
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