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DX実現のためのAPI活用 注意点を棚づくりに例えてみよう

ITシステムの構築を検討しようとするとき、さまざまな「API」の活用が視野に入ってくるでしょう。APIは便利な反面、検討の段階から考慮しておくべきことがいくつかあります。

この記事では、APIを活用するときに注意すべき点について、とある会社の棚づくりに例えて解説していきます。

APIについてくわしく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
APIとは? 今さら聞けないDX関連用語をわかりやすく解説

API活用時に考慮すべきこととは?

APIはあらかじめ配慮すべき点に留意をしながら活用すれば、大きな効果が期待できます。しかし、安易に用いればリスクにもなりかねません。

APIを活用するときの注意点やポイントを5つご紹介します。

  • API活用は計画が大切
  • API活用は先々まで見据えよう
  • すでにあるAPIサービスも活用しよう
  • APIサービスは比較検討しよう
  • 複数のAPIを使うなら「APIゲートウェイ」

これらの点を、とある会社の棚づくりで学んでいきましょう。

登場人物:カマダコーポレーションの千葉君と石川君


自分たちで棚をつくろう

ここはサービス業を営むカマダコーポレーション。

昨年完成したばかりのオフィスビルの17階からは、すばらしい景色が望めます。この4月、DXやイノベーションを推進するため、新たな部門を立ち上げました。そして専用オフィスを設けることになりました。

千葉君は、ここのところ新オフィスに一足先に乗り込んで、ネットワークの整備からオフィス什器の設置まで忙しくしています。

「う~ん」

ところが、さきほどから千葉君はオフィス什器のカタログを何度も見返してうなだれています。抜かりはないと思っていたのに、書類棚を予算に組み入れるのを忘れていたのです。

千葉君は石川君に相談してみることにしました。

「新オフィスの件なんだけど、棚を頼み忘れてしまったんだ」「それは困ったね、今からでも発注できないの?」「幸い予算は少し残ってるんだけど、どの棚も高くて足が出てしまう」 「次の予算を待っているわけにもいかないね」「そうだ。昨年APIを活用して申請システムを作ったときみたいに、自分たちで作れないかな」「なるほど、ちょっとした棚なら自分たちで作れるかもしれないね」

千葉君は、過去にAPIを活用してシステムを構築したことがあるようです。そのときと同じように、お金をかけずに自分たちでできないか考えたのです。さっそく棚を置くフロアスペースを改めて計測し棚の奥行や幅、高さなどの計画を始めました。

API活用は計画が大切

 「棚の件だけど、きちんと設置できるよう、大きさなんかは今しがた測ってきたんだ」
 「そうだね、大きすぎて収まらなかったりしたら困るよね」
 「まさに、そこを気にしていたんだよ。あとでホームセンターへ行ってこようと思うんだ」
 「ホームセンター? 千葉君、それはちょっと待った」

さっそくホームセンターに出かけようとする千葉君を、石川君が止めました。

 「えっ、『ちょっと待った』って? ホームセンターの定休日か何か?」
 「そうじゃなくて。大きさはよさそうだけど、まずはどんなものを入れるのか、目星はついているの?」
 「おおよそは決めているんだけど」
 「それなら何列にするのかや棚はどんな間隔で何段にするのか、それから入れるものの重量なんかも考えて素材や構造など強度も検討しないといけないよ」
 「なるほど、APIでシステムを作ったときのように緻密な設計図が必要だね」

API活用において、設計はとても重要です。

大きさだけを適当に測って作った棚は、あとから作り替えることができません。APIも同じで、一度定義し利用や公開を開始してしまうと簡単に改変することが難しくなります。

API活用は先々まで見据えよう

結局、千葉君は自分でも加工のできる木材で作ることを考えたようです。

 「なるほど木材を選んだんだね。たしかに自分である程度加工もできるし木材の種類や板の厚さ、構造なんかを工夫したら強度の検討もできるね」「加工が楽だし、棚幅とかも安易に決められるから木材を選んだけど。たしかにもう一歩考えるべきことがあったんだなあ」
 「そうそう、2~3年後のことも考えてる? おそらく今から部門のメンバーが増えるだろうことも予測できているわけだから、棚の増設なんかも考えておいたほうがいいね」「なるほど、将来のことも考えた設計が必要だったんだ。しっかり考えてくるよ」

API活用においては、「先々まで見据えた」設計がとても重要です。

将来、棚を使うメンバーが増えることや、載せるものが変わることも想定しておくと、新たに一から棚を作らなくていいかもしれません。定義の明確化と同時に、将来にわたっての拡張性も意識しておきましょう。

すでにあるAPIサービスも活用しよう

さて翌日。千葉君はフロアレイアウトもやり直して、将来左右に棚を増設できるようスペースも確保したようです。

「石川君、今年はもともと予定していた通り1つだけ作るけど、必要に応じて左右にも増設できるスペースも設けることにしたんだ。ちょっとホームセンターまで行ってくるよ」
 「ちょっと待った! 増設の話はわかったけど、工具なんかはそろってるの?」「そこはぬかりないよ、ほら、のこぎりは持ってきた」
 「これは……ずいぶん古い庭木用なんかののこぎりだね」「かなりさびているけど、使えるんじゃないかなと思って」
 「さすがにこれではきれいな棚は作れそうもないよ。ちょっと設計図を見せて」「これだよ」
 「なるほど。千葉君、実はね、全部自分で加工しなくても、ホームセンターに行くと木材の加工サービスなんてのがあるよ。都合の良いサイズに切ってもらったらどうかな」「そういえば申請システムを作ったときも、申請者認証はすでに社内にあったAPIを利用したよね」

すでにあるAPIサービスの利用も検討しましょう。

木材や道具を買ってきて自分で切るのではなく、木材のカットや加工など外部のサービスを使うことができれば、要件や要求に見合った棚を安価に簡単に組み立てられるかもしれません。

市販のパッケージやサービスを丸ごと利用することもできますが、自社の要件や要求が厳しければそれにちょうど見合ったパッケージやサービスを見つけることは困難です。ところが様々な外部のAPIや自ら用意したAPIなどを併せて活用することでスマートな構築をすることができるのです。

APIサービスは比較検討しよう

「そうか、そういうサービスがあるんだね。自分でのこぎりで切るよりは、きれいにカットしてもらえそうだし、サイズもきちんとしていて完成したときのクオリティも上がりそうだな」
 「ちなみに棚を自由な位置に設置できるようにするなら、ダボの穴も複数開けておくとよいね」「棚位置は固定にしてしまおうと思っていたけど、そんな工夫ができるんだね」
 「ダボの加工はどこかにサービスがないか、自分で工作しなければならないかもよく調べる必要があるね」「そういえば申請システムを作ったときもカレンダー参照の部分はAPIサービスがないか探したね。自分で作ると大変だけど、すでにAPIサービスがあることがわかってずいぶん助かったんだった」
 「カレンダーは間違ったら大変だものね。そうそう、同じようにダボの加工は位置などの精度も必要だから、専門のサービスが使えるといいね」

APIサービスを利用するときは比較検討しましょう。

複数のサービスがあるなら、どれが最も要件・要求を満たせるかなど、比較検討するといいでしょう。

複数のAPIを使うなら「APIゲートウェイ」

千葉君はしばらくしてホームセンターに出かけていきました。

 「千葉君、おかえり。どうだった? あれ? 荷物はどうしたの?」「それがさあ、すごいんだ。ホームセンターで相談したらダボの穴も開けられるというんだ。本来ならたくさん穴を開けなければならなかったから助かっちゃったよ」
 「時間がかかるからいったん戻ってきたんだね」「いや、それが、違うんだ」
「『違うんだ』って……ダメだったのかい?」「ホームセンターで軽トラックも貸し出していて、それに載せてくる予定だったんだけど」
「免許を忘れていったとか?」「いや、それがさあ、違うんだ」
「もう、じれったいなあ。どうしたんだい」「僕は設計図を見せて板を選んだだけなんだ。必要なサイズに切ってもらって、ダボの穴も開けてもらって。そのあともすごいんだ。木ねじで止める部分の加工や強度を上げるための金具も提案してもらったよ。運搬も自分でせずに明日届けてもらえることになった」
「ワンストップで全部できたってことだね。」 「ちなみにAPIはそんなわけにいかないよね」
「いやいやAPIでもちょうど似たものがあるよ。APIゲートウェイっていうんだ」

APIゲートウェイの活用も検討しましょう。

棚づくりをホームセンターに相談した千葉君は、欲しかったものがワンストップでホームセンターから提供されていることを知りました。APIの世界でも、複数のAPI群をまとめて管理してくれるサービスがあります。これは、APIゲートウェイと呼ばれています。

API活用はしっかり計画を立てて進めよう

棚づくりで学ぶAPI活用の注意点、いかがでしたか。

棚づくりと同じで、APIも作る前や使う前から注意点を考慮しておくことで、のちのちの手戻りを最小限にでき、活用の幅も広がります。APIを活用するときには将来を見据えた計画を立て、すでにある外部サービスも上手く探して活用していきましょう。

APIの活用についてもっとくわしく知りたい方は、IPAの公開している「DX実践手引書 ITシステム構築編」をご覧ください。
「DX実践手引書 ITシステム構築編」


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