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DX推進指標による自己診断で一歩先へ 現状把握から変革へ


2024年5月にIPAが公開した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2023年版)」。
各企業が提出したDX推進指標自己診断結果を分析し、提出企業の全体傾向をはじめ企業規模別や先行企業、経年変化、複数年連続で提出している企業の特徴などをまとめたレポートです。
その内容から、日本のDXの現状を見ていきましょう。

数字で見る日本のDX

まず知りたい DX推進指標とは何か

DX推進指標は企業の経営とITの両面から評価します。評価は6段階からなる成熟度レベルで行います。
指標の内容によって表現は異なりますが、おおよそ以下の内容です。

レベル0: 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取り組みに至っていない
レベル1: 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまる
レベル2: 全社戦略に基づく一部の部門での推進
レベル3: 全社戦略に基づく部門横断的な推進
レベル4: 定量的な指標などによる持続的な実施
レベル5: グローバル競争を勝ち抜けるレベル

つまりレベル0は未着手、レベル5までいけばグローバル競争を勝ち抜くことができる日本でも有数のDX先行企業です。DXに関する取り組みをちょうど始めたばかりであれば、レベル1といったところでしょうか。
この成熟度をDX推進指標の各項目に当てはめて、自社のDX推進状況を自己診断していきます。

企業は現状を評価した現在値、3年後の目標である目標値を設定します。これにより、自社の課題を把握し、次のアクションにつながる気づきを得ることができます。
また、自己診断結果をIPAに提出した企業には、他の企業のDXの推進状況と自社のDXの取り組み状況を比較できるベンチマークレポートが無償で提供されます。ベンチマークレポートを活用すると自社の全国での位置付け、業界内での位置付けが分かり、次に取り組むべきステップに対する理解を深めることにもつながります。

日本のDX推進状況 全体傾向

2023年の日本のDX推進状況はどうだったのでしょうか。DX推進指標自己診断結果分析レポートの数字を見ていきましよう。分析レポートでは、2023年1月~2023年12月の1年間に提出された4,047件の企業の自己診断結果について分析しています。

2023年は前年に引き続きものづくり補助金の申請の要件化なども伴って、過去最高の提出件数となりました。大企業のみならず、多くの中小企業や多くの業種の事業者に提出いただき、DX推進指標自己診断の活用の取り組みが日本中にますます広がりました。

IT面の取り組みだけでなく、DX推進のための経営のあり方や仕組みづくりも重要 

DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2023年版)をもとに作成

4,047社の全企業の現在値の平均では、経営視点指標が1.22、IT視点指標が1.29と、経営面よりもITの面が高い結果となりました。これは、前回2022年の結果と同様です。データ活用やDXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に力を入れていることが分かります。

しかし、現在値の平均がレベル3以上のDX先行企業やDX認定を取得したDX認定企業に絞ってみるとどうでしょうか。先行企業、DX認定企業の現在値の平均は経営視点指標のほうがIT視点指標よりも高い値となっています。
このことからDXを積極的に進めている企業では推進・サポート体制や、投資意思決定と予算配分の仕組みなど、DX推進のための経営のあり方や仕組みづくりの重要性を理解し、積極的に取り組んでいると考えられます。

DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2023年版)をもとに作成

継続的かつ定期的な現状・課題の把握が変革の鍵

DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2023年版)をもとに作成

2年連続、3年連続で自己診断に取り組んでいる企業は年を経るごとに、経営面、IT面ともに成熟度が向上しています。長期に渡ってDXに取り組むとともに、DX推進指標の活用など、継続的かつ定期的に自社のDXの現状や課題を把握・共有したことが、成熟度の年々の向上につながったと考えられます。

そして3年連続提出企業の目標値は4.0を超えました。成熟度4は、全社戦略に基づく持続的実施です。このことから、3年連続で自己診断に取り組んでいる企業の多くが、全社的かつ持続的にDX推進のための取り組みを進める目標の到達が視野に入ったことがわかります。

DXへの取り組みトップ5とワースト5

自己診断結果を提出した企業がDXで最も取り組んでいる項目はどこでしょうか。また、反対に取り組めていない項目はどこでしょうか。分析レポートの数字から、全企業における現在値の平均が高い、低い指標5指標を見てみましょう。

DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2023年版)をもとに作成

2023年は、「どんなデータがどこにあるかを分かっている人」と「データを利用する人」が連携できているかどうか「データ活用の人材連携」が現在値平均で全指標の中でトップとなりました。次いで、DXを通じた顧客視点での価値創出に向け、ビジネスモデルや業務プロセス、企業文化の改革である「事業への落とし込み」がランクインしました。

反対に、取り組めていない項目はどれでしょうか。

DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2023年版)より作成

指標において現在値の平均が低い項目を上の表に表しています。DXに適したKPIに対する評価やDX推進のための人材に関わる項目が多く見られます。
最も現在値平均が低い「評価」は、DX推進にかかわるKPIに則したプロジェクト評価や人事評価の仕組みが構築できているかという項目です。

ここから企業の傾向として、DXのための新たな評価の仕組みや投資意思決定、予算配分の仕組みの構築や人材の活用などはこれから、もしくは課題を抱えている状況だと考えられます。DXのための経営の仕組みや在り方など、経営面のDX戦略推進が今後充実していくことが望まれます。

DX推進指標は「健康診断」 年1回の定期診断を

DX推進指標とそのガイダンスでは、DX推進指標を用いた自己診断は健康診断における問診票や血液検査のような役割であると説明しています。大事なことはDX推進指標を活用して、まず自社の現状を把握すること。その上で、自社の遅れている部分や弱い部分、あるいは伸ばしていきたい部分を関係者で共有し、DX実現のために議論することです。35項目の指標をひとつひとつ確認しながら、『これはまったく取り組めてないな』『なるほど、こういう指標があるのか、意識もしてなかったな』など、ひとつひとつ確認しながら議論していきましょう。そして改善のためのアクションを検討し、実施しましょう。

また、定期的に自己診断を行い、長期的に改善サイクルを回していくことも重要です。年1回のDX推進指標による自己診断で持続的なDXの実行に繋げていきましょう。

2024年9月・10月は「DX推進指標」の集中実施期間です。


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