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DX推進、継続が成熟の鍵 続けよう!DXの歩み

2023年3月にIPAが公開した、「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2022年版)」。
各企業が提出したDX推進指標自己診断結果を分析し、提出企業の全体傾向をはじめ企業規模別や先行企業、経年変化、複数年連続で提出している企業の特徴などをまとめたレポートです。
その内容から、日本のDXの現状を見ていきましょう。

数字で見る日本のDX

まず知りたい DX推進指標とは何か

DX推進指標は企業の経営とITの両面から評価します。評価は6段階からなる成熟度レベルで行います。
指標の内容によって表現は異なりますが、おおよそ以下の内容です。

レベル0: 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取り組みに至っていない
レベル1: 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまる
レベル2: 全社戦略に基づく一部の部門での推進
レベル3: 全社戦略に基づく部門横断的な推進
レベル4: 定量的な指標などによる持続的な実施
レベル5: グローバル競争を勝ち抜けるレベル

つまりレベル0は未着手、レベル5までいけばグローバル競争を勝ち抜くことができる日本でも有数のDX先行企業です。DXに関する取り組みをちょうどはじめたばかりであれば、レベル1といったところでしょうか。
 この成熟度をDX推進指標の各項目に当てはめて、自社のDX推進状況を自己診断していきます。     

企業は現状を評価した現在値、3年後の目標である目標値を設定します。これにより、自社の課題を把握し、次のアクションにつながる気づきを得ることができます。

日本のDX推進状況 全体傾向

2022年の日本のDX推進状況はどうだったのでしょうか。DX推進指標自己診断結果分析レポートの数字を見ていきましよう。分析レポートでは、2022年1月~2022年12月の1年間に提出された3,956件の企業の自己診断結果について分析しています。

2022年はものづくり補助金の申請の要件化なども伴って、過去最高の提出件数となりました。また、全体の9割以上を中小企業が占めています。

経営よりもIT先行

全企業における指標の平均点は、経営視点指標よりもIT視点指標のほうが高いDX推進指標 自己診断結果分析レポート(2022年版)より作成2022年の全企業の現在値の平均は前年 よりも0.76低下しました。しかしながら大企業は最も値の高かった前年2021年とほぼ同様。中小企業は前年よりも低下したものの2019年 より高くなっています。 このことから、日本のDXは着実に進展していることがわかります。

全企業の現在値の平均では、経営視点指標が1.15、IT視点指標が1.24。経営面よりもIT面の値が高い結果となりました。これは、前回2021年の結果と同様です。DX推進指標の自己診断結果を提出した企業では、経営面よりもIT面でのDXが先行しているようです。

しかし、現在値の平均がレベル3以上のDX先行企業に絞ってみるとどうでしょうか。 先行企業の現在値の平均は経営視点指標のほうがIT視点指標よりも高い値となっています。このことから先行企業はDXに経営面で重点的に取り組んでいると考えられます。

レベル3以上の先行企業は全体の7.1%

継続することで成熟度が高まる

3年連続提出企業の現在値平均は毎年上昇しているDX推進指標 自己診断結果分析レポート(2022年版)より作成

全ての指標において過去に提出のある企業のほうが、過去に提出がない企業よりも高い値になりました。自己診断の取り組みを複数年行っている企業は、目標値の達成に向けて繰り返し自己診断を行い、進捗管理をしつつ、成熟度を向上させていると考えられます。

そして、3年連続で自己診断に取り組んでいる企業の目標値は、経営視点指標、IT視点指標ともに2022年は4.0を超えました。成熟度4は、全社戦略に基づく持続的実施です。このことから、3年連続で自己診断に取り組んでいる企業の多くが、全社的かつ持続的にDX推進のための取り組みを進める目標の到達が視野に入ったことがわかります。

DXへの取り組みトップ5とワースト5

自己診断結果を提出した企業がDXで最も取り組んでいる項目はどこでしょうか。また、反対に取り組めていない項目はどこか。分析レポートの数字からそれぞれトップ5を見てみましょう。

現在値平均がトップの指標はデータ活用の人材連携DX推進指標 自己診断結果分析レポート(2022年版)より作成

2022年は、「データ活用の人材連携」が現在値平均で全指標の中でトップとなりました。DX推進指標を提出した企業では、「データ活用の人材連携」について他の指標よりも優先的に取り組まれています。

反対に、取り組めていない項目はどれでしょうか。

現在値平均のワーストはKPIへの評価や人材関連が多いDX推進指標 自己診断結果分析レポート(2022年版)より作成

指標において現在値の平均が低い項目を上の表に表しています。人材やKPIに対する評価に関わる項目が多く見られます。

ここから企業の傾向として、手をつけられるところからDXを進めており、新たな評価の仕組みや投資意思決定、予算配分の仕組みの構築までは進められていないと考えられます。加えてDXの実行やデジタルに精通した人材の確保や育成についても滞っていると考えられます。また、バリューチェーンワイドにおいても手がつけられておらず、まだ部門内の取り組みにとどまっているようです。

継続的な実施が成熟の鍵

2022年は、ものづくり補助金にDX推進指標自己診断結果の提出が要件化されたこともあり、2021年の提出件数486件から大きく増加して、3,956件の提出がありました。

このうち、レベル3以上の先行企業は全体の7%。残りの93%はレベル3未満です。さらにレベル1未満の企業は全体の50%にも上ります。つまり、約半数の企業は、DXの全社戦略が立てられておらず、まだまだ散発的な実施にとどまっているのです。

これは、DXの取り組みをはじめたばかりの企業が多いということです。
2022年に初めてDX推進指標を提出した企業は、今回の提出をきっかけに、DX推進指標を活用してDX推進に向けた現状や課題の把握、さらに取るべきアクションの検討を進めていきましょう。
今はまだレベルが低くても大丈夫。継続的に実施することが成熟の鍵となります。

そして、DX推進指標で重要なのは高いレベルを取ることではなく、自社の現状を把握すること。また、 関係者の垣根を超えて、DX実現のための議論をすることです。
『これはまったく取り組めてないな』『なるほど、こういう指標があるのか、意識もしてなかったな』など、35項目の指標をひとつひとつ確認しながら議論していきましょう。

★2023年9月・10月は「DX推進指標」の集中実施期間です。

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